ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『映像制作を助けてくれ』杉本【50夜目】

キリ番には大事な一本を選びたい。と思っていたらこれになってしまった。台無しだ。 熱狂のアニメーション上映イベント、「FRENZ」に出場するアニメーション作家・杉本による作品。めちゃめちゃラフな(というか、汚い(笑))絵で、社会人をやりながら趣味…

『みゃくみゃく -Drops of Life-』今林由佳【49夜目】

『おにしめ おたべ』を制作した今林由佳の、こちらは二年次作品(大学院なので、二年で修了になる)。『おにしめ~』よりはぐっと内容が「表現」寄りになっているけれど、冒頭、目をとじたままほっぺたをくっつけあう「それら」たちのグラフィックを観た途端…

『おにしめ おたべ』今林由佳【48夜目】

昨日の記事で、久々に『Googuri Googori』を観たら、何となくこの作品も一緒に思い出された。連想ゲームブログです、ここは。 前回に続いて、今度は母と子の対話だ。お台所で、母親の料理を子どもが後ろから眺めている。母親が作っているものが何なのか、ま…

『Googuri Googuri』三角芳子【47夜目】

東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻、いわゆる『藝大(院)アニメ』は、現在日本のトップに位置づけられるアニメーションの教育機関だ。ベルリン国際映画祭で銀熊賞を勝ち取った和田淳を皮切りに、各分野で活躍する数多くのアニメーション作家…

『ポンコツクエスト』松本慶祐【46夜目】

数あるコントアニメーションの中でも、言葉のセンス、そして細かな作り込みで群を抜く『ヤイヤイ森のコミー』の松本慶祐初商業作品であり、いきなり大ブレイクすることにもなった逸品。YouTube、BSでの放送も注目を浴びてはいたものの、これがAbemaTVで放映…

『ヤイヤイ森のコミー』松本慶祐【45夜目】

好きな作品のことばかり書いていればいいから、このブログは楽ちんだ。ちょっと不公平な気もするので、ぼくが苦手なジャンルの話もする。一番積極的に見ないのは、いわゆるショートギャグだ。面白いものは本当に面白いけれど、正直苦手に感じる作品も多い。…

『5iVE STAR』2501×森井ケンシロウ【44夜目】

歴史的傑作『日本橋高架下R計画』で、アニメーションとモーショングラフィックスの境界線を突破し、現在まで続くカルチャーを作り出した細金卓矢。彼のその原点と言えるのが、まだ彼が2ちゃんねるFLASH・動画板のコテハン「2501」だった頃に制作された、この…

『Madrix』細金卓矢【43夜目】

お題を与えられ、そこから8時間で新作映像をひとつ作る……『Cut and Paste Tokyo 2009』というトーナメント・イベントに、細金が出展した作品。超短距離走で制作されているからか、細金の持ち味であるポップセンスが存分に生かされたものになっている。細金は…

『Vanishing Point』細金卓矢【42夜目】

モーショングラフィックスの雄、細金卓矢の個人作品。驚くなかれ。本作の発表は2010年だ。正方形の画角、有機的なカラーリング、3DツールにはCinema 4Dが取り入れられ……(繰り返すが、7年前である!)。当時これを観た時は、細金の他の作品と比べるとやや難…

『日本橋高架下R計画』細金卓矢【41夜目】

GIFアニメーションのカルチャーが「WEB系アニメーター」を生み、2ちゃんねるのFLASH・動画板が「PV系」……のちの「MG系」と呼ばれるモーショングラフィックスのカルチャーを育て、After Effectがアマチュアクリエイターにも浸透し、ニコニコ動画がVocaloidを…

『ほかほかおでんのうた』細金卓矢&山下清悟【40夜目】

モーショングラフィックスはまったく専門分野ではないので、より詳しい方が丁寧に説明してくださることはきっとあると思うけれど……。ここ数年で、抽象絵画のようなアプローチがメインストリームだったモーショングラフィックスに、急激に具象的なアニメーシ…

『カナメヲ』らっパル【39夜目】

いわゆる「WEB系アニメーター」であり、特にエフェクトアニメで世に知られるようになった早熟の天才・らっパルが、2015年に突如発表した短編作品。その内容は、彼のこれまでのフィルモグラフィと連続性がありながらも、想像を絶するほどの圧倒的な飛躍を遂げ…

『プレゼントまでの道のり』らっパル【38夜目】

根っからのインターネット・ネイティヴであり、「WEB系アニメーター」に影響を受け、小学生か中学生か……という超早熟な段階から(自分も小学生からだけど)作品数を重ねたらっパル。ストーリー性はどちらかというと希薄なほうで、とにかく動かしまくり、派手…

『SPACE SHOWER TV 「アニソン日本」』らっパル【37夜目】

いわゆる「WEB系」アニメーターと呼ばれる人々がいる。テレビアニメなどの商業アニメーションを手がける原画マンは、通常、まずスタジオに採用され、現場に動画マンとして放り込まれる。そこで何年も下積みをし、キャリアアップしていく……。そんな数十年の伝…

『FRENZ 2015 二日目深夜の部オープニング -TAKE OFF-』機能美p【36夜目】

機能美pは現在、年に一度行われる上映会、FRENZを中心に新作を発表している。新宿ロフト・プラスワンを二日間に渡り借り切って行われるこのイベントは、間違いなく「日本一熱狂的な映像上映イベント」だ。観客のテンションの高さ、一方での礼儀の良さ、上映…

『Clade over 〔クレード オーバー〕』機能美p【35夜目】

「キネティック・タイポグラフィ」と銘打たれた、文字を画面に大胆にあしらう作風で観客を熱狂させる機能美p。昨日紹介した傑作『月は無慈悲な寄席の女王』の翌年、機能美pは早速、新たな挑戦を企てる。 『Clade over 〔クレード オーバー〕』で描かれたの…

『月は無慈悲な寄席の女王』機能美p【34夜目】

さぁ、とんでもない一本を紹介しよう。 この作品を最初に教えてくれたのは、ひらの君だ。「これ見たことある?絶対好きだと思う」と、LINEか何かで送ってくれた記憶がある。後で調べたら、その年初めて僕がFRENZ2012という上映イベントに出展したとき*1、別…

『動物園(いきたいところ)』(作者不詳)【33夜目】

あ!あった。14夜で取り上げた作者不詳の『banging the drum』の作家さん、YouTubeチャンネルをみつけたぞ。おそらく作り手が同一人物と思われる作品が、もう一本だけ出てきた。タイトルは動画情報によれば『動物園』とあるが、作中では『いきたいところ』と…

『サラリーマンNEO Season3 オープニング』青木純【32夜目】

青木純は、卒業制作となった『スペースネコシアター』以降、商業制作、公開制作やワークショップなどで新たな作品を重ねてゆくことになる。その中から、僕が特に好きな作品を一つ挙げる。 インターネットではもう見れないのだが……NHKのテレビ番組『サラリー…

『将棋アワー』青木純【31夜目】

あなたがもし「アニメーション」を作りたくなったならば、まずどんな内容のものを思い浮かべる? キャラクターが動きまくるバトルアクション? 瑞々しい高校生たちの引き裂かれるような青春劇? 重厚なストーリーが展開する近未来SF? それとも寝静まった夜…

『コタツネコ』青木純【30夜目】

出ました! 青木純の代表作。どてらを着た猫が六畳の和室でコタツに座っている。という謎の絵力もさることながら、可愛らしいタイトルとのギャップが激しい冒頭のインパクトたるや、すさまじい。青木純のどの作品もそうなのだが、音の演出がこの作品でも実に…

『奈良鹿物語』青木純【29夜目】

青木純の作品を観ていて思うのが、制作期間的な制約から、ちゃんと中身を縛って、それをストーリーにも確信的に反映させていることだ。『走れ!』『テレビ』『Apartment!』は、実は制作期間もとても短いし、ワンカットもの、最小限カットものの作品になって…

『Apartment!』青木純【28夜目】

「アパートもの」は、わりかし学生が思いつく中では「あるほう」の作品だと思う。自分が卒業した代も含めて、他にも数作品見たことがある。こういう作品が往々にして弱くなってしまうのは、「主人公が不在」になりがちだからだ。結局、主人公を決めきれない…

『テレビ』青木純【27夜目】

このブログでも必ず時間を割いて紹介することになると思う、歴史的傑作――『ホーム』から数ヶ月後、青木はひとりで再び人形アニメーション制作に乗り出す。アイデアは極めてシンプルだった。ワンカットでみせる、「テレビの中に閉じ込められてしまった男」……。…

『走れ!』青木純【26夜目】

「これからまだ記事を975本も書くのに、もう青木純か!? 早すぎるんじゃないか!?」的なツッコミ、ようく判ります。でもだめだ! とにかく手をつけないと始まらない……。とっておいてもしょうがない……。 青木純が「自主制作アニメーション」の王道であり、…

『夏と空と僕らの未来』井端義秀【25夜目】

一つの強いアイデアが、語り草になる作品がある。井端義秀の『夏と空と僕らの未来』なんて、正にそれだ。 作品が始まると、マンガのコマ割りがあらわれる。その中に登場人物が駆け込んでくる。今で言う「モーションコミック」風の演出……最初だけは。作品の設…

『アメリカンホームコメディ』熱湯【24夜目】

前作『山田君ロックンロール』で、会場に集まった観客に手拍子を促す「参加型」アニメーションを提唱した熱湯。彼はこの作品で、さらにとんでもないことを企む。作品が始まると、(『フルハウス』みたいな)いかにものアメリカン・ファミリーがテーブルに座…

『山田君ロックンロール』熱湯【23夜目】

熱湯がもうひとつ革新的だったのは、このころ勃興していた「オンライン上映会」に(この作品で)新しいアイデアを吹き込んだことだ。インターネット上にアップされたものを各自のPCで見ながら、2ちゃんねるの専用スレッドに感想を書き込み、たまに誰かがブロ…

『スイート・スイート・スイートホーム』熱湯【22夜目】

FLASHというジャンルで活躍していた、熱湯の代表作といえる一本。まるで小演劇のような一幕モノで、居間のちゃぶ台を中心に、とある一家が座っている。まずは父が話し始める。「毎度お馴染み家族大喜利……司会のお父さんです」。誰一人クスリともせずに、淡々…

『コークスクリューバレンタイン』熱湯【21夜目】

インタラクティブな仕掛けで映像を2パターン見せるやり方は、ビデオ作品では少々誘導が難しいんだけれど、この作品は最初にふたつのボタンがあって、クリックしたほうが再生される仕組みになっていた……ので、とても入りやすかった。全く同じ内容のアニメーシ…