『Vanishing Point』細金卓矢【42夜目】
モーショングラフィックスの雄、細金卓矢の個人作品。驚くなかれ。本作の発表は2010年だ。正方形の画角、有機的なカラーリング、3DツールにはCinema 4Dが取り入れられ……(繰り返すが、7年前である!)。当時これを観た時は、細金の他の作品と比べるとやや難解というか、少々アカデミックすぎて、あんまりキャッチーではないな……と思った記憶がある。それがどれだけ間違いだったのかということだろう。5年先、8年先に「最先端」とされるヴィジュアルを、細金はこの頃から予期していたのだ。
平面的で、記号的なものをとにかくがむしゃらに動かし尽くす……。モーショングラフィックスには、当時の「流儀」にも似たカルチャーがあって、そこからいかに新しい表現を生み出すか、誰もが競うように試行錯誤していたように思う。細金の作品は、何か、そこから「有機的」なものを作り出そうとしていた印象がある。直線よりも曲線。平面よりも奥行き。記号よりも、生命……。
彼が「有機的」の北限のような、深夜アニメ的なカルチャーの作品へ(結果的に)接近してゆくことになったのも、なんとなく流れを感じさせるものがある。彼はこののち、『日本橋高架下R計画』で、それらすべてのカルチャーを接着させることに成功することになる。