ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『スイート・スイート・スイートホーム』熱湯【22夜目】

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FLASHというジャンルで活躍していた、熱湯の代表作といえる一本。まるで小演劇のような一幕モノで、居間のちゃぶ台を中心に、とある一家が座っている。まずは父が話し始める。「毎度お馴染み家族大喜利……司会のお父さんです」。誰一人クスリともせずに、淡々と“大喜利”は進んで行く。そしてアニメならではのカットインが入る……。

短い尺にコントがぎゅっと詰め込まれていて、笑えるし、何より、途中からこの物語の「ホントウ」が明らかになるのが上手い。後半に「どんでん返し」があるのだ。クスクスしながらつい油断していると、ちょっとグッとさせられてしまう演出。これまでの熱湯作品にはないアプローチだった。こんなお姉ちゃんが欲しくなかった?

当時まだ世間的には流行り始めたばかりの、「萌え」という言葉をテーマにした「お題」が出されたFLASH・動画板のオンラインイベントに出展されていた作品。数々の作品が美少女の「萌え」を記号的に表現する中で、あえてこれまでの作風からも離れたユニークなアプローチを試みた秀作。とにかく笑ってもらおう、というこれまでの目標を越えて、作家が「その次」を目指し始めたような、そんな一種の覚悟も伝わるような作品。