『ファイター「3月のライオン meets BUMP OF CHICKEN」』ポエ山【138夜目】
『ゴノレゴ』『quino』を発表したアニメーション作家・ポエ山は、その後、ノウハウを生かして様々な商業作家としてのキャリアを積んでいる。他方、別名義も含めてインディペンデントでも数々の作品を残し、ニコニコ動画全盛期には、彼らしいキュートなグラフィックを用いたボカロPVも手掛け、好評を得た。
先月発売された「3月のライオン DVD3巻」の付録ブックレットに、ポエ山のスタッフコメントが2ページにわたって掲載されています。「動く!ニャー将棋」は2巻に1話、3巻に2話が収録されていますが3〜10話は・・・4巻に収録される・・・のか!?まだわかりません(笑 pic.twitter.com/8ZEoWJ4WhQ
— ポエ山 (@poeyama) 2017年7月2日
制作スタッフが公開されてないのでちゃんと告知してないんですがコンテ演出とアニメーションは自分ですね。監督という立場ではないですが。3Dパートはyama_koさんに作ってもらいました
— ポエ山 (@poeyama) 2017年7月27日
そんな彼が、テレビアニメ「3月のライオン」3巻付属ブックレットで、実に、実にさらっと発表したことがある。BUMP OF CHICKENと「3月のライオン」がコラボレーションした「ファイター」のアニメーションMVのコンテ演出・アニメーションは、ポエ山が手がけたというのだ*1。
これが、そのMVである。
僕はBUMP OF CHICKENに人生を変えられた人間なので(たぶん今も、彼らのためだけに生きている)、冷静に語ることはちょっと難しいのだが、BUMP OF CHICKENの本質である「歩き続ける孤独」や、生きることの困難、たったひとりで空を睨まなければならないこと、それでも自分にしか見えない光を追い続けるということ、その裏側には過去のあたたかで胸が締め付けられる「ぬくもりの場所」があるということ、たくさんの、無数の、(ひとつひとつはちっぽけな)カケラが次の自分の一歩を紡ぎ出すこと、守りたい誰かに本当に寄り添うことは不可能だということ、それでも傍にいたいと願うこと、誰もが自分という孤独を背負う同じ列車の乗組員であるということ――そのすべてを、卓越した演出で表現し切っていたことに、ただひたすらに感動した。久々にバンプでいいMV観たなぁ~この監督さん判ってるなぁ~と思いつつ、2014年11月末の発表から2017年夏に至るまで、その本当の作家は謎に包まれていたわけだ。
それが、ポエ山だったのだ。
この話で一番感動的なのは、ポエ山がFLASHアニメーション作家出身であるということだ。つまりBUMP OFCHICKENを広げ、認知させ、多くの10代の人生を狂わせたあの「バンプフラッシュ」を生で見知っていた世代である。かつて「バンプフラッシュ」を作ったり、鑑賞していた人々*2が、いまここでオフィシャルのBUMP OF CHICKENのMVを「本当に」作ってしまったのだ! あの頃の自分に教えてあげたい。幾千ものFLASHアニメーションが出場切符になって、空を舞い一本の線路を繋ぎ、その上を光り輝く鉄道が走り抜けて……ここにまで到達した。まるで、あの日見上げた虹の向こう側まで橋がかかったような想いだった。本当に、本当に、本当に、ショッキングなくらい、感激した。僕にとっては、変な話、生き方を変えようとまで思えたくらいの事実だった。だって、届くのだ。
同じくFLASHアニメーション作家としてキャリアをスタートさせ、現在も熱狂の上映イベント「FRENZ」で作品を発表するyama_koが、3Dアニメーションで本作に参加している。yama_koの作品はまたどこかでまとめて取り上げるけれど、とりあえずこのMVを貼っておく。そう、そういうこと、だ*3。