ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

2017-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『JAM FISH』飯田千里【86夜目】

子どもの頃から、車に乗るのが苦手だった。中は狭いし、移動は長いし、臭いはするし、退屈だし……。愛知方面の田舎に帰るときの、東名高速は特に嫌いだ。渋滞がものすごかった。今でも電車旅が好きなのは、クルマと比べて車内が広くて、降りようと思えばいつ…

『そうじきとおんなのこ』飯田千里【85夜目】

飯田千里は、とびっきりユニークなアニメーション作家だ。 ぶっとい線、記号的かつ親しみやすいイラスト、ビビットな色彩、そしてものすごくシンプルかつ……エンタメ感の高いストーリーテリング! こういう、ごく初期の作品から既に「観ている人を意識して」…

『lilac (bombs Jun Togawa)』ONIONSKIN【84夜目】

結局のところ、ONIONSKINは、作品における「感情」の露出を拒み続けてきたアーティストだったのだと思う。ここ数日観てきたような作品で行われているのは、「表」に出てくる表現技法としての…つまり単にテクノロジーとしてのアニメーション表現の追求。そし…

『煙夜の夢 a,香水壜と少女 b,空虚な肖像画 c,煙夜の夢(夜が固まる前)』ONIONSKIN【83夜目】

鑑賞した当初、度肝を抜かれた作品。 森は生きている(というバンド名です)の17分にわたる組曲にMVをつける、という「ヤメテアゲテヨ!」みたいな依頼内容もさることながら、作り上げてきたのはまさかのワンシーン・ワンカット。しかもスライド板を、素手で…

『endless summer』ONIONSKIN【82夜目】

自分は、『フミコの告白』〜『Airy Me』の辺りで、『ほしのこえ』『ホーム』以来続いていた日本の「自主制作アニメーション」の系譜は“一旦”途切れていると思うんだけれど、この作品に携わる小野ハナは、正にその「途切れた後」から頭角を現した、今イケイケ…

『都市計画』ONIONSKIN【81夜目】

昨日さんざん「ONIONSKINの作品には連続性がない」などと書き散らしてしまったが、これと昨日の『おわかれ』とは多少の連続性があるかもしれない。昨日はコマ撮り、こちらは2Dのアニメートだが、メンバーの菅谷愛のセンスがよく生かされた上品なミュージック…

『おわかれ』ONIONSKIN【80夜目】

ONIONSKINを語るのは難しい。自分は長らく、このアーティストの「芯」の部分が見えなかったのだ。 このブログをずっと読んで下さっているならば、ぼくが「自主制作アニメーション」にどうしても求めてしまう核の部分を読み解いて頂けているかもしれない。た…

『ハロウシンパシー』デコボーカル【79夜目】

ここ数日かけて紹介してきた一瀬と上甲は、実は同じ東京工芸大学の同期生で、現在はデコボーカルというユニットを組み活動している。これまで数々のショートアニメや、クライアントワークでその腕をふるっているけれど、そんなデコボーカルから一本ご紹介。 …

『Lizard Planet』上甲トモヨシ【78夜目】

懐かしいなァ……。第15回学生CGコンテストのグランプリ作品だ。同じ年の同期は『中学星』の清水誠一郎、『ひとりだけの部屋』の野山映、『向ヶ丘千里はただ見つめていたのであった』の植草航、『輝きの川』の大桃洋祐などだ(ちなみに山田園子『family』、大…

『ウシニチ』一瀬皓コ【77夜目】

おととい紹介した一瀬の衝撃作『かなしい朝ごはん』は、無理にジャンル分けすれば「ナンセンス」アニメとも呼べるものだと思う。一瀬の代表作『ウシニチ』は、その「ナンセンスさ」をさらに進めたような作品だ。 シンプルなドローイングのアニメーションで淡…

『雲の人 雨の人』上甲トモヨシ【76夜目】

上甲作品の大きな魅力は、その卓越したグラフィックだ。このキャラクターが「何で」出来ていて、触ってみるとどうなるのか、持ち上げるとどうなるのか……その「触」感の違いが、惜しげも無くアニメートで表現される。ちょっとズルして大雑把になってしまいそ…

『かなしい朝ごはん』一瀬皓コ【75夜目】

「美大生が作るアニメーション」を少なからず観てきていると、ストーリー展開にある程度予想がついてきてしまうことがある。……イヤ、とはいえ、誰でもアニメーションを作ることが出来るし、似かよったものを作るかもと辞めてしまうくらいなら、それでも作っ…

『ENGAWA DE DANCEHALL』坂本渉太【74夜目】

映像の世界は、(大小問わず)あらゆる技術革新と切っても切り離せない関係にある。一枚一枚手で描かなければ動かせなかった2Dアニメーションにも、様々な新しいツール、そしてテクノロジーが発明され、その参入の敷居を下げ続けてきた。 「パペットツール」…

『ロボと少女(仮)』アオキタクト【73夜目】

やっぱりこういう、クレイジーな作家なのだ。アオキタクトは。 処女作『ハルヲ』を発表後、その勢いのままに商業資本での長編作品『アジール・セッション』を上梓したアオキタクト。そこからほとんど間を空けず制作された本作では、いきなりそのアプローチを…

『総天然色少年冒険活劇漫画映画 ハルヲ』アオキタクト【72夜目】

たまにこういう、クレイジーな作家が現れてしまうのである。 前職はロックバンドのヴォーカル。いきなり前知識も何もなく3DCGソフトを買って、とりあえずひとりで全部作ってみた処女作が30分28秒のガチ長編*1アニメーション。どうしてそうなるんだ!? 貧困…