ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『おわかれ』ONIONSKIN【80夜目】

ONIONSKINを語るのは難しい。自分は長らく、このアーティストの「芯」の部分が見えなかったのだ。 このブログをずっと読んで下さっているならば、ぼくが「自主制作アニメーション」にどうしても求めてしまう核の部分を読み解いて頂けているかもしれない。た…

『ハロウシンパシー』デコボーカル【79夜目】

ここ数日かけて紹介してきた一瀬と上甲は、実は同じ東京工芸大学の同期生で、現在はデコボーカルというユニットを組み活動している。これまで数々のショートアニメや、クライアントワークでその腕をふるっているけれど、そんなデコボーカルから一本ご紹介。 …

『Lizard Planet』上甲トモヨシ【78夜目】

懐かしいなァ……。第15回学生CGコンテストのグランプリ作品だ。同じ年の同期は『中学星』の清水誠一郎、『ひとりだけの部屋』の野山映、『向ヶ丘千里はただ見つめていたのであった』の植草航、『輝きの川』の大桃洋祐などだ(ちなみに山田園子『family』、大…

『ウシニチ』一瀬皓コ【77夜目】

おととい紹介した一瀬の衝撃作『かなしい朝ごはん』は、無理にジャンル分けすれば「ナンセンス」アニメとも呼べるものだと思う。一瀬の代表作『ウシニチ』は、その「ナンセンスさ」をさらに進めたような作品だ。 シンプルなドローイングのアニメーションで淡…

『雲の人 雨の人』上甲トモヨシ【76夜目】

上甲作品の大きな魅力は、その卓越したグラフィックだ。このキャラクターが「何で」出来ていて、触ってみるとどうなるのか、持ち上げるとどうなるのか……その「触」感の違いが、惜しげも無くアニメートで表現される。ちょっとズルして大雑把になってしまいそ…

『かなしい朝ごはん』一瀬皓コ【75夜目】

「美大生が作るアニメーション」を少なからず観てきていると、ストーリー展開にある程度予想がついてきてしまうことがある。……イヤ、とはいえ、誰でもアニメーションを作ることが出来るし、似かよったものを作るかもと辞めてしまうくらいなら、それでも作っ…

『ENGAWA DE DANCEHALL』坂本渉太【74夜目】

映像の世界は、(大小問わず)あらゆる技術革新と切っても切り離せない関係にある。一枚一枚手で描かなければ動かせなかった2Dアニメーションにも、様々な新しいツール、そしてテクノロジーが発明され、その参入の敷居を下げ続けてきた。 「パペットツール」…

『ロボと少女(仮)』アオキタクト【73夜目】

やっぱりこういう、クレイジーな作家なのだ。アオキタクトは。 処女作『ハルヲ』を発表後、その勢いのままに商業資本での長編作品『アジール・セッション』を上梓したアオキタクト。そこからほとんど間を空けず制作された本作では、いきなりそのアプローチを…

『総天然色少年冒険活劇漫画映画 ハルヲ』アオキタクト【72夜目】

たまにこういう、クレイジーな作家が現れてしまうのである。 前職はロックバンドのヴォーカル。いきなり前知識も何もなく3DCGソフトを買って、とりあえずひとりで全部作ってみた処女作が30分28秒のガチ長編*1アニメーション。どうしてそうなるんだ!? 貧困…

『文學少女』大橋史【71夜目】

大橋のごく最近の作品も挙げておこう。リリックビデオの隆盛もあり、ここ数年は「文字」アニメートの仕事が目立つ大橋の、その代表作とも言える一本だ。 声とエレキ・ギターだけの静かなイントロに、ふわりと言葉が浮かび上がる冒頭。そして物語は急加速し、…

『kotonoha breakdown』大橋史【70夜目】

アニメーション作家・大橋史ウィークをお届けしております。今日は、彼のクライアント・ワークから一本抜粋する。これ、久々に観返したら、もしかすると当時以上に殴られたような感覚になった。すっごいわこの作品……。 大橋がこの頃トライし始めた、「キャラ…

『こうこう | koukou』大橋史【69夜目】

大橋史(パイセン)のオリジナルでは、いちばん好きな作品。『Your Thorn』で“サウンド”に、『CHANNELER』で“言葉”に挑んだドクター大橋研究室が次に目標としたのは、人間が口から発する“音節”、そして“声”の可視化だった。 大橋の作品は当時の「流行」みた…

『CHANNELER』大橋史【68夜目】

大橋がスゴいのが、これほどクライアント・ワークを手広く手掛けつつも、自身の「オリジナル・ワークです」と言える内容の作品も定期的に欠かさず送り出していることだ。そして毎度、その度に新しい挑戦を作品内に盛り込んでいる。そこがホントーに“ドクター…

『Your Thorn』大橋史【67夜目】

大橋史の出世作となった作品。前作『Notation of Rotating Earth』の幻想的なイメージ、ランドスケープ的アプローチを継承しつつ、過去作品から比較しても、極めて大きなジャンプアップを遂げている内容と言えるだろう。 美しい光の交錯、極めて有機的なシン…

『Notation of Rotating Earth』大橋史【66夜目】

「音楽」の要素を一音一音徹底的に追及する作風を、まるで「研究」するかのように極めてゆく、大橋史の大学の卒業制作にあたる作品。 音楽的要素を記号的なグラフィックで魅せつつ、風景を実写に切り替え、過去作品よりもより静かな内容に仕上がっている。ル…

『FOR』大橋史【65夜目】

大橋史の学生時代の作品まで全部取り上げ始めると、ちょっときりがなくなる(できちゃうけど……)。最初期作『Let’s☆Cookin’ Jam』は完全に具象的なイラストチックのアニメだったが、大橋はすぐに『ascension from the HELL』という作品で、その方向性を切り…

『Let’s☆Cookin’ Jam』大橋史【64夜目】

大橋史は、ぼくの大学の1年先輩にあたる。多摩美術大学情報デザイン学科情報芸術コース(現・メディア芸術コース)の卒業生で、僕とは学科も、コースも、後に入るゼミまで一緒だった*1。大橋パイセンの作品は各学年の審査会でもよく見ているし、進級展で一…

『I’m here』中内友紀恵【63夜目】

フルスクリーンで見よう。イヤフォンをつけている方は、出来ればスピーカーに切り替えて。ここが映画館だと思って、観て欲しい。 『祝典とコラール』制作後、東京藝大院アニメーション専攻に入学した中内の修了作品。この後制作する色々な商業作品も含めて、…

『スバラシイセカイ』中内友紀恵【62夜目】

めちゃめちゃ大好きな作品。 『祝典とコラール』の中内が、ミュージシャンのAoに提供したミュージック・ビデオ。静謐なアコースティック・ギターが奏でられると、電気のついていない室内がスクリーンに浮かび上がる。壁にかかる星空の写真たち。そこを横切る…

『祝典とコラール』中内友紀恵【61夜目】

“音楽を聴くと頭の中に流れ込んでくる、そのイメージを可視化する”。実際に音楽を聴いている場合、いきなり具体的なストーリーが頭で出来上がるような人はまれで、多くはきっと抽象的な、色と形が(あるいは風景とかが)交錯するようなものになると思う。古…

『夜ごはんの時刻』村本咲【60夜目】

なぜ、アニメーションでなければならないのか。 小説だったり、絵画だったり、漫画だったり、写真だったり、演劇だったり、音楽だったり、実写だったり*1、沢山の表現媒体がある中で、どうしてそれは、アニメーションでなければならないのか。作り手が時々立…

『旅するぬいぐるみ』田澤潮【59夜目】

2013年の夏くらいだったか、初めてコミックス・ウェーブ・フィルムのオフィスに招かれたときに、社長の川口さんがニコニコしながら、「ちょっと観てみてよ」と、この『旅するぬいぐるみ』のDVDをかけて下さった。全天プラネタリウム用の映像として制作された…

『LIFE NO COLOR』田澤潮【58夜目】

漫画でも、イラストでも、小説でも、音楽でもなく――アニメーションで表現する、ということが、たまらなく「カッコイイ」ことだった時代を象徴するような作品のひとつだ。 『LIFE NO COLOR』自体は4分しかないアニメーションで、描かれる時間軸も短く、構成も…

『ファイアボール』荒川航【57夜目】

先日松慶さんを取り上げたときに、「好きだったショートギャグ作品って他に何があったかなぁ」とぼんやり考えた。そこへ、ちょうど『ファイアボール』の新作発表ニュースが飛び込んできた。そうだ、例えば『ファイアボール』があった。 ウォルト・ディズニー…

『ヤマを横切る白雲のように人には分からないように私に笑いかけて』84yen【56夜目】

傑作『CROWN』をはじめ、日常にひそむフワフワした恐怖、そして狂気じみた執念をフィルムに焼き込むアニメーション作家84yenの最新作。MAKKENZとarai tasukuのミュージック・ビデオとして制作されたアニメーションだ。 やわらかなモーフィング、意味ありげな…

『CROWN』84yen【55夜目】

きのう紹介した『sleepy dance』は2011年、『ちいさい音ダイアル』は2012年に発表された84yenの作品だ。本作はその2~3年後、2014年にオンラインイベント「FRENZ」で発表された。この『CROWN』は100をこえる上映作品の中から、最終日、最終プログラムの大ト…

『sleepy dance』84yen【54夜目】

その奇抜かつユニークなセンスで、日常にひそむ「目には見えない何か」を描き出す84yen。そんな彼が、いわゆるボカロっぽい曲に映像をつけるとどうなるのか? それがこれだ。……本当に、いちいち作品の度に違うチャレンジをしていて、驚かされる。 冒頭こそし…

『ちいさい音ダイアル』84yen【53夜目】

僕が初めて84yenの作品を観た作品が、これだった。 昨日、おとといと84yenの作品を紹介してきたが、この『ちいさい音ダイアル』の作風には驚かれるのではないか。いわゆる「怖い」演出もなく、コラージュもデジタル作画も使われていない、全編ガチ水彩アニメ…

『はいいろさんは昼がこわい』84yen【52夜目】

今回このブログで84yenを取り上げるにあたり、ざっと代表作を見直したんだけれど、これは今回初めて観た作品。独特の、ダウナーで不気味な、観ているこちらが不安になるような「感じ」を描く84yen。日常生活でなぜか私たちが「目を背けている」ようなものを…

『走るチルノ』84yen【51夜目】

きのう紹介した杉本と、今日から取り上げる84yenは、共に「うごくクソ画像コンテスト」というオンラインイベントを主催している。時にハイコンテクストで、技術力も要求される「アニメーション」というジャンルに、まるで反旗を翻すような低コスト、無意味、…