ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『FRENZ 2015 二日目深夜の部オープニング -TAKE OFF-』機能美p【36夜目】

機能美pは現在、年に一度行われる上映会、FRENZを中心に新作を発表している。新宿ロフト・プラスワンを二日間に渡り借り切って行われるこのイベントは、間違いなく「日本一熱狂的な映像上映イベント」だ。観客のテンションの高さ、一方での礼儀の良さ、上映の度に巻き起こる万雷の拍手、そして作家たちへのリスペクト、ホスピタリティ。……どれをとっても最高だ。FRENZでは毎回、人気作家を指名して各部の「オープニング映像」を制作している。毎度毎度イベントを熱狂に包んで来た機能美pは、FRENZ2015でオープニング映像監督に初指名。その作風を存分に生かし、なんと15分間もの(!)オープニング映像を作って来た。それが、これだ。

会場全体を「飛行機」に見立てた、というテンション爆上げなアイデアもさることながら、まるで会場を支配するような手拍子・掛け声の煽り、ひとつひとつの気持ちの上げ方、どれをとっても血がたぎるような興奮がある。音楽も実に素晴らしい。これを今見るだけでもけっこう鼻血が出そうになるのに、本番の会場では本当に、とてつもない熱狂(FRENZY)に包まれた作品だった。後半では一転して『Clade over 〔クレード オーバー〕』を彷彿とさせるグラフィック中心のアニメートで魅せ、さらに『月は無慈悲な寄席の女王』のような言葉の力で、幾多のNOやボツを乗り越え、闇の向こうから送り出されて来た作品たちを敬意を込めて紹介してゆく。カッと胸が熱くなるような演出だった。FRENZというイベントに初年度から参加していた機能美pの、そのすべての経験が生かされたかのような作品だった。

たった一度の上映に焦点が当てられたものなので、若干の内輪ネタや、少々古くなった時事ネタも含まれている。そこに目を瞑ってもらえれば、ワオ、と思っていただける作品なのではないか。とはいえいくつかの時事ネタは、今も古びていないけれど……。今見ても笑っちゃったよ。「乗っ取られてますよ!」。