ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『奈良鹿物語』青木純【29夜目】

青木純の作品を観ていて思うのが、制作期間的な制約から、ちゃんと中身を縛って、それをストーリーにも確信的に反映させていることだ。『走れ!』『テレビ』『Apartment!』は、実は制作期間もとても短いし、ワンカットもの、最小限カットものの作品になっている。技術面でも最小限のリソースしかない状態で、きっちりとスキの少ないものに仕上げているし、アイデアや演出で手数の少なさをカヴァーしている。青木純が「自主制作アニメ」の必須図書である理由はそこにもある。自分ひとりぐらいしか頼れない状態で、どんな作品に仕上げていくのか……そのコストパフォーマンスがとてもうまい作家なのだ。

そんな中で、これらのフィルモグラフィーに続けて制作された『奈良鹿物語』は、初めて青木純がしっかりと自分の絵で、カットを割った作品になっている……のだと思う。僕が見落としていなければ……。それぞれの作品で試み、そして鍛えたノウハウが少なからず生かされている作品だ。他のものと比べるとちょっと存在が地味かもだけれど……。