ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『Googuri Googuri』三角芳子【47夜目】


東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻、いわゆる『藝大(院)アニメ』は、現在日本のトップに位置づけられるアニメーションの教育機関だ。ベルリン国際映画祭銀熊賞を勝ち取った和田淳を皮切りに、各分野で活躍する数多くのアニメーション作家を、初年度から次々と輩出し続けている。たまたまだけれど、47本目にして、ようやく「藝大院アニメ」の作品を取り上げることになった。

おじいちゃんと孫娘の、声と手触りで交わし合うふしぎな対話。変幻自在なのにどこか(いい意味で)マンガチックで、親しみの持てるキャラクターがいい。指もおてても柔らかくて大きくて、具体的な絵になっていることは画面中ほとんどないのに、何も不安に感じることがない。色も実に素晴らしい……このひとだけの「白」を持っている作家さんだ。

ぼく自身が、おばあちゃんっ子だったから、何か「よくわかる」感じがある。夜遅くに、疲れて寝ちゃってるおばあちゃんのベッドの中に潜り込むあの感じも。お母さんが引っ張り出す勢いで、ちょっと怒ってる感じも。気持ちの中では、あのスピードで自分がシュッと動いている感じも。後半の……彼女の息遣いの感じも。おばあちゃんが寝ていたベッドに、後でひとり身をうずめる感じも。けれど今見ると、少しお母さんの気持ちもわかったりした。止めたくないけど、やっぱり止めるよね……。いつか、このおじいちゃんの気持ちになれる日も来るのかな。

ひとつだけ。こういう作品をパソコンで観るときは、出来ればフルスクリーンにするとよい。多くのアニメーションが、劇映画としてのこだわりを画面の隅々にまで配置している。動画サイトやマルチウィンドウなどで、他の要素(文字だったり、他のソフトだったり、動画サイトの関連動画アイコンだったり)が周囲にあることを想定しないで作られているのがほとんどなのだ。「それって、面倒くさい押しつけじゃない?」と思われるかもしれない。でもでも、もしよかったら、この作品は少なくともフルスクリーンで……。小さな画角ではちょっと伝わらない、画面全体のやわらかなさざなみが泳ぎ出した途端、ああ、そういうことか、と、きっと思えるはずだ。丁寧に作られたアニメーションは、スクリーンという「枠」からまず、しかも一から設計がなされているのだ。

ちなみに、このおじいちゃんの声優さんめっちゃいいな……と初見のとき観ながら思っていたら、クレジットを見て、その正体にひっくり返った記憶がある。特に恩師とかではないらしい。逆にすごいな!!

三角(さん)はアニメーションだけでなく、絵本作家としても活躍している。自主制作では、2011年にも『Mosquitone』というシリアスなアニメーション作品を発表している(けっこう、作風が違う)。たしかどこかで観たんだけれど、記事を書けるほどは覚えていない……また観る機会が出来たら、書きます。