ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『ウシニチ』一瀬皓コ【77夜目】


 おととい紹介した一瀬の衝撃作『かなしい朝ごはん』は、無理にジャンル分けすれば「ナンセンス」アニメとも呼べるものだと思う。一瀬の代表作『ウシニチ』は、その「ナンセンスさ」をさらに進めたような作品だ。

シンプルなドローイングのアニメーションで淡々と描かれるのは、理不尽で、奇妙で、時々ちょっとエグかったりするシーンの数々。ただし、「難解」と呼ぶにはすこし違うだろう。たぶん近いのは『不思議の国のアリス』だ。気になって仕方がない、視聴者の興味をたもつナンセンス・マンガの数々。ラストに訪れる説明不可なカタルシスは、映画的な感動でこそないけれど、心地よい不条理感をたっぷりと味わえる、一種の上品さ(気品さ)を感じさせるものだ。

昭和年代、多くのイラストレーター兼マンガ家が、さながら自身の創作の延長のように、シュールなアニメーションを紡ぎ続けていたという。『ウシニチ』はもしかすると、平成のナンセンスアニメと呼べるものなのかもしれない。

鬼にファンデーションつけてあげてるところがかわいい……。