ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『Lizard Planet』上甲トモヨシ【78夜目】


 懐かしいなァ……。第15回学生CGコンテストのグランプリ作品だ。同じ年の同期は『中学星』の清水誠一郎、『ひとりだけの部屋』の野山映、『向ヶ丘千里はただ見つめていたのであった』の植草航、『輝きの川』の大桃洋祐などだ(ちなみに山田園子『family』、大川原亮『アニマルダンス』、川尻将由『ニッポニテスの夏』なども最終ノミネート)。正にゴールデンエイジ(のひとつ)!口をぱっくり開けながら、凄い作品の行列を見上げていた時代だ。なんかノスタルジー……。

ファーストカットで赤々と映される原始太陽。そして生命誕生、カンブリアまでをひたすら太陽から遠ざかる形で描きながら、『Lizard Planet』は幕をあける。ノイズを発する人工衛星に導かれて、主人公がたどり着くのは、高層ビルに原始自然を開発され尽くしたトカゲの一団だ。上甲は『雲の人 雨の人』と本作の間に、別に『BUILDINGS』という作品も発表しているけれど*1、これもまた生き物のようにニョキニョキと伸びたビルディングが登場する。けれど彼らは結局、先祖を生み出した太陽に引き込まれる形で自らを滅ぼすーー。

太陽に突っ込む瞬間、一番最後のリザードが柔和な笑みを浮かべているのがきつい。何を思って滅びるんだろう……。太陽に背を向けて、最後、トカゲがたどり着く場所には、一つの示唆こそあるけれど、やはり明確な「生きる」答えはない。魂の船着場は存在しない。生き物とはつまり、すべてがただ個々に漂い続ける惑星のひとつづつなのだろう。素晴らしい色彩や、動いているシンボルの物量がやはり見事な作品で、彼だけの宇宙観がここには確かに宿っている。隅々にまで行き届いている生き物の気配に、どこか心が落ち着く作品。

*1:作品に罪はないのですが、今見るにはちょっとつらい描写があるので、こちらは紹介を控えることにしました。ちなみにYouTubeで一番再生されているのはこの『BUILDINGS』だったりします!