ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『煙夜の夢 a,香水壜と少女 b,空虚な肖像画 c,煙夜の夢(夜が固まる前)』ONIONSKIN【83夜目】

鑑賞した当初、度肝を抜かれた作品。

森は生きている(というバンド名です)の17分にわたる組曲にMVをつける、という「ヤメテアゲテヨ!」みたいな依頼内容もさることながら、作り上げてきたのはまさかのワンシーン・ワンカット。しかもスライド板を、素手で、休むことなく、ずーっとちょっとづつ動かしていくという……。一度失敗したらもちろん撮り直しだろう。気の遠くなりそうなMVだ。

最大3コマ(ですよね?)で表現されるアニメの動きは、スライド板が差し掛かる手前まではおぼろげだけれど、重なり始めた途端に突然生々しく、まるで這うように蠢き始める。各所によって動きの大小がはっきりとつけられていて、手で動かしているがために、その動きの速度が一定していないのもまた、独特の「生き物感」を醸し出す。いや、これは「生き物」なのか? かえって“自然”とも違うような……。全体のモチーフも“四季”で、屏風絵のような、仏画のような……あれ、ああいう絵の名前って、何だっけ……。

技法の取捨選択に「さすが」感はあるものの、実際に表現しているものは、またしても過去との連続性がない。さすがにクライアント・ワークっぽすぎるだろう、ONIONSKIN。と、思っていた……(その答えは明日!)。