ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『かなしい朝ごはん』一瀬皓コ【75夜目】


美大生が作るアニメーション」を少なからず観てきていると、ストーリー展開にある程度予想がついてきてしまうことがある。……イヤ、とはいえ、誰でもアニメーションを作ることが出来るし、似かよったものを作るかもと辞めてしまうくらいなら、それでも作った方がいいと自分は思う。絶対に悪いことじゃない。無駄なことなんて何もない。

けれど、せっかく何か作るなら、やっぱり観ている人を驚かせたいじゃないか?

この作品には、初見のとき「ええええぇぇぇぇーーーーっ!!?!?!」と度肝を抜かれた。椅子から転げ落ちそうになった記憶すらある。こここ、こんなのあり!? ちょっと冷静になると、このセット(背景)でこのどんでん返しはミスリードとしてはズルいといえばズルいのだが……*1。タラタラ長くしてしまいそうなところを、絶妙なテンポ感とアニメートで走り抜けるところも素晴らしい。アイデアに決して甘えていないと思う。

グラフィックだけでなく、鋭く尖った強烈な作家性。「作品」とはつまり、鑑賞者にぶつける一つの挑戦状なのかもしれない。一瀬のこの後の作品から比較すると、やはりこれは「最初のころの作品」だという印象もなくはないので、それはつまり逆にいえば、「誰でもガンバレバ鑑賞者に一撃を加えられるのだ」という証明にもなっているのではないか? どうせ作るなら同じ一本……驚かせたり、泣かせたり、笑わせたり、してみたいよね。

淡々と積み上げられる絶望が、可愛らしい絵柄とも相まって、鑑賞者の網膜を焼き切るような作品。ところで、何でこの題材で作ろうと思ったんだろう……。

*1:だって、こんな背景だったら、「そうなっている」だなんて思いもしないじゃないか!