ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『ハロウシンパシー』デコボーカル【79夜目】

 


ここ数日かけて紹介してきた一瀬と上甲は、実は同じ東京工芸大学の同期生で、現在はデコボーカルというユニットを組み活動している。これまで数々のショートアニメや、クライアントワークでその腕をふるっているけれど、そんなデコボーカルから一本ご紹介。

若手ロックバンド、シナリオアートのミュージックビデオ。二人が本作でどのような役割分担をしたのかは想像でしかないけれど……全体的には一瀬(さん)のカラーが色濃い感じ。そこに上甲(さん)がグラフィック面で密度を上げ、支えているイメージだろうか。一方で一瀬のソロ作品から比較すると、もう圧倒的にそのエネルギッシュなパワーがエンターテインメントとして見事に炸裂しまくっていてちょっと泣きそうになってしまう。わりかし抽象的なイメージの作品だとは思うんだけれど、何度か観ていくうちに不思議といろいろ解ってくるというか……。爆裂的な光が、太陽が、幾千の眠れない夜を走り抜けて、躍動して、粉々になって、また眩く輝きを放つ。歌詞とのシンクロも素晴らしい。本当はわかっている。全ての答えは握りしめている。誰かに照らされるわけでなくても、自分から光を発することはきっと出来るのだ。勇気と確信が炎に変わるようなダンス。単に技法やイラストレーションの技術だけでなく、一瀬のエネルギーと上甲の生命観、互いの作家としての持ち味がさらに高いところまで昇ったような秀作。