ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『タイムライン』森田仁志・橋本新【96夜目】


唐突ですが! つい最近観た作品をここで紹介する。日本のミュージシャン・クラムボンが今年発表した楽曲「タイムライン」のMVだ。

ふしぎな形の「なにか」が、有機的になったり、無機物になったり、生き物のように見えたり、またそう見えなくなったり……。間違いがないのは、スクリーンの中でモチーフが絶えず変わり続けていることだ。ゆらゆらと流れる「なにか」はどれも優しい色彩で、心おだやかにゆったりと眺め続けることが出来る。抽象的で、でも時々非常に具象的で――けれどその一方、いわゆる抽象的なアニメーションによくあるような、「ついていけなくなる」瞬間がまるでない。その理由は実は明らかで、もちろんグラフィックや質感、色遣いや動きのセンスが見飽きさせないこともあるけれど――実は私たちが、一番最初から、これらが全て一体何について描いているかを、ちゃんと判ることが出来ているからだ。

この映像のクライマックスで、そして歌詞で、ああ、やっぱり、と私たちは思う。驚きはない。けれどその代わりに、これほど抽象的なグラフィックなのに――なぜか共有されていた「それ」に、わたしたちはまたどこか安堵することが出来るのだ。音楽自体も本当にすっばらしいんだけれど……、けっこう誰に見せても気に入って下さると思うんですよね、この作品は……。完全に新しくはないのかもしれないけれど、静かな傑作です。すっごく観返している……。あえて誘導するならば、本ブログでも取り上げた村本咲の『夜ごはんの時刻』と、同じテーマを描いていますよね……。

制作したのは、アニメーション作家の橋本新とクリエイティブ・チーム「TYMOTE」の森田仁志。