ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『ニニ九』丸山薫【103夜目】

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とびっきり可愛いアニメーションを紹介したい。

日本の一般家庭に「インターネット」が登場したのは1998年ごろ。1999年には人口普及率21.4%、翌2000年には37.1%に達している。ADSLiモード2ちゃんねるが登場し、GoogleAmazonが日本でサービスを開始させたのも、この頃だ。そして、インターネット上で音付きで、しかも軽量なサイズでアニメーションを楽しむことが出来た「FLASH」が急速に普及したのは、まさにこの1998年〜2003年頃にあたる。

FLASH」が画期的だったのには、いくつもの理由がある。例えば、使い方が本当に簡単だったこと。そして出回っていたあらゆるグラフィック・ソフトと、そう使用感が変わらなかったこと……。丸山薫は、現在は「ハルタ」などを中心に活躍する漫画家・イラストレーター。今でこそ再びそういう流れが生まれ始めているけれど、当時もこうして、イラストレーターがその「楽しみ」の延長線上として、FLASHアニメーションを作るケースが存在したのだ。

一方、FLASHの特徴であるベクター・ベースのグラフィックでは、ビビッドでグラフィカルな線や塗りには強みを発揮したものの、紙と鉛筆で描いたような……緻密でグラデーションの美しいものは、表現しづらかったところがある。丸山は、自身の強みを最も生かしたビットマップ・ベースでアニメーションを構築し、この秀作、『二二九』を送り出した。2003年春のことだった。

いま見ても全く色褪せないグラフィックの美しさ、ワクワクする音楽、夜明けの空気、素晴らしい美術設定、そして疾走感。砂煙が巻き上がり、日の出の方向から輸送機が見えてきたときの、あの景色は今でも心を、中学生のときの自分にまで戻してくれる。オチもとても粋だ。あのころ、いきなりこんなハイクオリティなアニメーションが飛び出してきて、FLASH界隈のみなさんが多少ザワついた(笑)ことにまで思い馳せていただけたら、さらに嬉しい(ちなみに『ほしのこえ』が発表される約半年前の作品である)。

本作含め、きょうから紹介する丸山のアニメーションは、全てホームページから閲覧することが出来る。

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もう一枚、好きなキャプを。