ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『睡蓮の人』村田朋泰【124夜目】

本ブログで主に取り扱っているのは、新海誠彼女と彼女の猫』が登場し、NHK衛星第一で「デジタル・スタジアム」が放送開始された2000年前後より現在に至るまでの日本の「短編アニメーション」についてだ。簡単に整理しておくと、1997年に文化庁メディア芸術祭がスタートし、Macromedia FLASHが日本上陸。新海誠の『彼女と彼女の猫』とAC部の『ユーロボーイズ』*1が2000年。それから2年間で青木純・小柳祐介、近藤聡乃真島理一郎、宍戸幸次郎、「FLASH・動画板」、吉浦康裕、そして大山慶や新海岳人らが続いてゆく。この「インディペンデント・アニメーション」とか「自主制作アニメ」とか呼ばれた作品にまつわる、一連の「どんどんすごい人が出てくる」流れは、実に2014年ごろの石田祐康、ひらのりょう*2、ぬQ、久野遥子まで脈々と続いてゆくことになるのだ。新海誠や「デジスタ」や、青木純や近藤聡乃などがレジェンド的立ち位置になるのは、この流れの先頭を切ったパイオニアであることも大きい。

そしてもう一人、この「大きな流れ」の始祖となった人物を取り上げなければならない。村田朋泰だ。

村田は私大を中退したのち、浪人・再受験を経て東京藝術大学デザイン科*3に進学。その当時から人形アニメーションを手掛け、卒業制作作品として『睡蓮の人』を完成させる。それが、『彼女と彼女の猫』や『ユーロボーイズ』と同じ2000年なのだ。彼は本作で文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞を受賞し、歴史の表舞台へと姿を現すことになる。

圧倒的な詩情やオリジナリティ、そして(自分の言い方になるけれど)「"映画"感」の濃さ、そして長年にわたり「自身のオリジナル作品」を発表し続けたその姿勢は、正にこの後に続いたあまたの作家たちの「ひとつ上の先輩」といえる存在なのだ。

ところで、どうしてこんなに前段で「流れ」の解説をしたかというと、えっと……『睡蓮の人』は……大昔に見たことあるのですが……内容ほとんど……思い出せなくて……(笑)すみません……。か、カメが可愛いんだよ!でもとにかく、取り上げないのはありえない作品なので……。

*1:デジタル・スタジアム」初代グランプリ作品。

*2:ひらの君はあんまりこの文脈は意識していないかもしれないけれど……。

*3:その当時は藝大院アニメはもちろん、造形大のメディア造形、工芸大のメディアアートといった「デジタルアート」や「アニメーション」を多少学べる学科はまだ存在しない!