ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『ぐるぐるの性的衝動』竹内泰人【10夜目】

「性的興奮を憶えるくらい和音が好き」。僕が生涯で一番尊敬しているアーティスト、BUMP OF CHICKEN藤原基央がインタビューで言っていたことだ。理屈も屁理屈も越えて、ただただヤりたくてしょうがない。とにかくキモチイイんだから仕方ない。たとえそれが、自分以外には理解されないとしても。時々誰かが「バカだねぇ」って、半ば呆れつつ笑ってくれるなら、それもそれでちょっと悪くないけれど……。衝動だとか、ロックンロールだとか、色んな言い方が出来るかもしれないけれど、藤原が言っていたこの「性的」という表現は、なんとなく自分にはぴったりとはまって、ぐっと来るものがあったのだ。

だから、この作品のタイトルは、本当に好きだ。

どんなモノ好きが、朝から晩まで24時間も公園に張り付いて1分ごとに写真を撮ったりするのだろう。しかも、ちょっとづつ動きながらだよ!? 狂気の沙汰としか思えない。空間の選択も決して選び抜かれているとは言えないだろう。たぶんこの公園とかも単に作者んちの近所にあって、「なんとなくグッと来てたんですよね~」程度のものなのだろう。一方で非常に丁寧なのが、手ブレしている1枚1枚のシーケンスをちゃんと繋がって見えるように1コマづつ修正していることだ。この作品では、それも鑑賞者に観てい判るようになっている。その手間をわざわざ人に見せているのだ。だから、この作品が描こうとしているのは、単なるタイムラプスじゃない。美しい風景でも、生活の営みでもない。正に、これを「やらざる終えない」ような、そんな作者のどうしようもないほどにパワフルな「性的衝動」そのものなのだろう。

とても、とても正しく、アーティスティックな初期衝動に満ちた作品だ。この作品の発表当時はコンテスト全盛期。どんな学生も1本作っては、複数のコンペティションやテレビ番組へ絨毯爆撃するように応募していた。この「ぐるぐるの性的衝動」は学生CGコンテストと国際ニコニコ映画祭という、かなり毛色が異なるコンテストで同時受賞を果たす。これだよ、これ。と今でも思うことがある。自分のホームポジションみたいな作品のひとつなのだ。忘れてはいけないクリエイティブの「性的興奮」、「性的衝動」が、この作品には確かに記録されているから。