ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『まつすぐな道でさみしい』岡本将徳【116夜目】

超絶技巧コマ撮りアニメーション作家・岡本の東京藝術大学大学院修了作品。声優に竹中直人が起用され、「藝大のコネクションって一体……!?」と当時の鑑賞者をビビらせた(笑)一本だったりもします。

とにかく、挑発的な内容だ。思えば『ばあちゃん』の頃からの、岡本作品にある一種のカッコ良さはつまり「挑発的」なところだった。この要素だけで作品を一本もたせますよ、という頑固オヤジのようなオリジナリティと自信。爺さんが空を仰ぎ、顔をかき、音がするので振り返り、次はこちらの方を向いて、ほとんどそれだけで作品を構成してしまう大胆さ。そして実際に成立している驚き。アニメーションというテクノロジーへの確かな技術と献身と、そしてモチーフへの観察眼、プラス愛情(みたいなもの)がそれを可能にしてしまっている。冒頭のテロップが終わり、どどうと風が吹いて後ろの緑が揺れるファーストカットの驚きには、脳の回線がショートするくらいの衝撃が訪れるだろう。ほんとに、どうやって、こんなもの作れたんだよ、って感じだ。

モンタージュを用いて、他の作品よりも比較的複雑なことを表現しようとしている作品でもあるだろう。ここはもしかすると、好みが分かれるかもしれない。