ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『そんな夜』WHOPPERS【112夜目】


今年の新千歳空港国際アニメーション映画祭で、この作品を大きなスクリーンで観られたことは大きな収穫だった。なんかすごく、映画っぽいんですよね。実際、ある種の映画へのリスペクトがとても込められている作品だと思う。全体的にユーモアが海外の、ちょっとオシャレでからっとしたものになっているのだ。

抜群のイラストに色のセンス、ゆったりとした動きも実に見事。時々、わざとリズムにあわせてくる所も可愛らしい。そしてワンシーンごとの切り取り方がとてもいいのだ。誰かと一緒だったり、一人ぼっちで泣く人にソッと肩を寄せる存在が現れたり……。ちょっとグロいかな、というポイントも入れつつ、それを絶妙にやわらかにしているのもいい。嘘をついていないと思う。最後の集合シーンをサッと終わらせるところもうまい(つい、じっくりやってしまいがちなシーンですよね)。

……あなたの“そんな夜”に忍びに来るのが、こんなご機嫌なヤツラなんだぜ、って感じ、ほんとに素晴らしい着眼点だと思う。音楽へ持たせたい役割を、映像の作り手がしっかり認識している好例。