ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『家族デッキ』村田朋泰【127夜目】

 

や~~~も~~~良かった~~~!!!アニメーション作家・村田朋泰が『路』シリーズ以後に手掛けた、下町の小さな理容店を舞台にしたミニ・シリーズ。それが『家族デッキ』だ。

ファーストカットから抜群だった。木造の小さな家、やさしく響く環境音。お母さんは二階の窓を開けて、寝坊助のお姉ちゃんを布団の上からポンとたたく。春の日差しと風が吹き抜ける。この、あまりにも自然で、なのに輝いてすら見える「生活」の景色に思わずくらくらさせられた。なんて、なんて瞬間を切り取るのだろう。

この「写真のように美しい」シーンの数々は、村田の確かな技術力によっても支えられている。特に、自然光を意識した照明に惹きつけられた。いとおしく、胸が締め付けられるような、懐かしいにおいのする部屋や廊下、理容室の景色を、そして小さな七福神たちがちょこちょこと動き回る。何でもないお話なんだけれど、余韻は深く、深く、わたしたちを包み込む。

テレビや、インターネットで、もし機会があればぜひ観て頂きたい。忙しかったら、第一話の最初のワンシーンだけでもいい。本当に、言葉さえ失うような、素晴らしいファーストカットなので。