『はいいろさんは昼がこわい』84yen【52夜目】
今回このブログで84yenを取り上げるにあたり、ざっと代表作を見直したんだけれど、これは今回初めて観た作品。独特の、ダウナーで不気味な、観ているこちらが不安になるような「感じ」を描く84yen。日常生活でなぜか私たちが「目を背けている」ようなものを、えぐいくらい真直線にフィルムから映し出している。鋭い白黒のコントラスト、幅広いシーケンスの選択、1コマづつにまで注ぎ込まれた「動き」へのこだわりも素晴らしい。
ニコニコ動画のコメント欄にも書いてあったけれど、一見不気味な作品なのに、これを観ていてどこか「ほっ」とすると言う人もいるかもしれない。よかった……「目に見えない不安」は、やっぱり存在するんだ、って、ちょっと安心するような感じ。少し、わかる。
といいつつ、『時間が余りまくった若者が、その焦燥感をぶつけようとがむしゃらに作られた作品』というのが真実だったりするのかな。どうだろう? 間違いないのが、84yenが「わりと最初から」身に着けていたこのセンスに、自身で決して溺れなかったことだ。彼はこのフィルムから、その後、さらにさらに大きな飛躍を重ねてゆく。