『走るチルノ』84yen【51夜目】
きのう紹介した杉本と、今日から取り上げる84yenは、共に「うごくクソ画像コンテスト」というオンラインイベントを主催している。時にハイコンテクストで、技術力も要求される「アニメーション」というジャンルに、まるで反旗を翻すような低コスト、無意味、さながら「これを観るのは時間の無駄だよ」とでも言いたげな狂った作品を集めまくるというものだ。これに出展されるアニメは、どれも尖っていて本当に面白い。このイベントに主催者でありながら率先して作品を送り込む84yenは、FLASHからキャリアをスタートさせ、現在に至るまで数多くの作品をオンライン上に発表している。
彼の、その独特の「感じ」が、よく解る一本を紹介する。
音楽との同期もさることながら、じわじわと伝わるこのダウナー感たるや! 多くの人が理由もないのに「怖い」と感じる、あのどうしようもなくフラついた恐怖を、本当に描き出すのがうまい作家なのだ。
もちろん、彼の作品がこれ1本だけなら、さすがにただの一発屋である。けれどこの「才能に見えなくもない狂気」が、鑑賞者の想像を絶するほどの「本物」であることを、そして彼が「この才能」におぼれず、どれだけ作品制作で血反吐を吐くまで戦い続け、自身を革新してきたのかを、これから数日間の更新でじっくりとお目にかけよう。