ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『松が枝を結び』村田朋泰【131夜目】

『木ノ花ノ咲クヤ森』より始まった、村田の「震災五部作」*1最新作。このシリーズでは最も村田の人気作品に近い作風で、可愛らしいキャラクターがアイコンタクトを交わし、どこかなつかしい景色が巧みな表現によって描かれて、そしてそれらが……大津波によりばらばらに引き裂かれてゆくまでが描かれてゆく。

仲良しの女の子のふたごは、どこへ行くにもいつもいっしょ。同じ森で遊び、同じ道で遊び、同じように雨宿りをして。けれど、あの大きな揺れの日、なぜか私たちはささいなことでケンカしてしまって、姿も形もまるで鏡のように一緒なのに、ふたりは大きな力によって現世と黄泉に引き離される。クスッとなるようなシーンも挟みつつ、村田らしい時間軸の前後をも操りながら、やがてその決定的な断絶の瞬間に向かって、物語はひたひたと、そして淡々と進んでゆく。ストーリー自体は大枠でしか把握できないのに、積み重ねられる様々なディティールが、海岸線をこえて鑑賞者である私たちをも飲み込んでゆく。

とても暗い作品だけれど、個人的には『白の路』と並ぶくらいキャッチーな内容に仕上がっていると思う。きっと多くの人が共有し、忘れていたはずの記憶の戸をたたき、最後には自然と涙するだろう。いま、村田の作品をまとめた『夢の記憶装置』という特集上映が全国巡回中なんだけれど、この作品で迎えるクライマックスの壮絶さは暴力的なほどだった。とっても、おすすめです。

*1:ここまで三部作と書いてしまっていたけれど、ホームページによるとあと2本作るみたいですね……!