ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『天地』村田朋泰【130夜目】

『木ノ花ノ咲クヤ森』に続く「震災三部作」(この言い方は僕の独自のものです)二作目は、村田のフィルモグラフィ史上でも異質な(たぶん)実験映像的作品として『天地』に結実した。炎が湧き上がり、大地が映され、水が流れて、土を削りその形を変えてゆく様が、実に10分間に渡って淡々と描かれてゆく。

村田の作品はセリフもほとんど用いられないし、「わからない」部分がとても多い。にも関わらず「なぜか、わかる」のがとても気持ちが良くて魅力的だなと思っているけれど、本作はさすがに自分にはちょっと厳しかった。非常にコンセプチュアル、かつ前衛映像的な、ただ自然現象を映してゆくのみの作品になっているので……。けれど、村田が描き出そうとしている「震災」シリーズにおいては、この、人間の力の及ばない、遥か太古の大地創造をめぐる物語について、どうしても入れておかなければならなかったのだろう。あの「震災」が奪い去ったものを、本当の意味できちんと整理するための、ひとつの、確かな事実確認として。

この作品単体で見るという機会はさすがにないと思いますが、シリーズとしては欠かせない作品になるのだろうと思います。