ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『Square Apartment』永谷優治【120夜目】


『シリーズおともだち』の永谷優治による最新作。『シリーズおともだち』で発揮した、カワイイキャラクターに不穏なことをさせまくる不条理ギャグを今回もぞんぶんに味わえる作品となっている。

以前青木純『Apartment!』のときにも書いたが、ショートアニメだとわりとあったりする、「アパートもの」とも呼ぶべき一つのジャンルがある。主人公が住むアパートとその隣人たちがゆるく繋がって交流したり、あるいはオムニバス調に個々の物語が展開していったり。小規模アニメーションにおける「アパートもの」ってけっこう玉石混合で、実際この作品にも、「アパートもの」ではあるあるすぎて死にたくなる「騒音を出す隣人」が何のひねりもなく登場したりして、ああ~もう~それ何本も見てきた~って気持ちに、その場はさせられてしまう。……そんな、なんとなく見る前に想像がつく程度の「アパートもの」的お決まりを、本作は一つ残らず粉砕してゆくのだ。

左上の男性の理不尽っぷりも笑えるし(ラストの展開も意外性が抜群!)、結局左下の男の人が最後まで全く絡まないのもなかなかいいギャグだと思う。1番最後、「アパートもの」作品では思いついても絶対にやらなかったアレまでしっかりやっちゃって、で、そのあとのオチまで完璧に「『ほのぼの』の皮を被った狂気」で終わらせちゃうところとか、ホントばっちりだ。これこそが永谷の作風なのだな……と思う。

なぜか起用されている、PC-98XX風のグラフィックもユニーク。絵柄や演出で、いくつもギャップを仕込んでいるからこそ、こういう過激なギャグが効いてくる。笑いのアニメーションに必要なものは、決してスクリプトに留まらないのだな、とつくづく思い知らされる好例だ。