ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『family』山田園子【18夜目】

たぶん、山田園子の代表作と言えばこちらになるのだろう。非常に丁寧なコマ撮りアニメで、おばあちゃんがリンゴを切る様子を4分間、淡々と描いた作品。音の設計も素晴らしいし、何より、これもまた「感情」や「手触り」に重きを置かれていることが素晴らしい。じゃあじゃあ「家族」をテーマにアニメを作りましょう、となって、果たしてこの着想に思い至れるのかということなのだ。作り込まれたアニメートそのものが、制作者の「対象」への、やさしく、熱く、あたたかで、そして真摯なまなざしそのものにもなっている。これが「メッセージ」なのだ。セリフはない。説明もない。けれどどんなクソみたいな台詞にも、説明にも、展開にも、決して描けないような「family」の輪が、テーブルの上が、鮮烈な印象となって鑑賞者に焼き付く。本当に、抜群の作品だと思う。

作者の山田園子(さん)はこの他にも在学中に作品を残していて、コンペティションをいくつも制覇している。いまは長らくアニメーションを発表していないけれど、こないだ出たばかり!の富士屋カツヒコの漫画『打ち切り漫画家(28歳)、パパになる。』(ヤングアニマルコミックス)に、愛妻「そんたん」として登場している。さらにnoteでは山田さんの新作イラストを今でも堪能することが出来るので、こちらもおすすめです。子育てがんばってください!(お会いしたことないですが!)