ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『ウツのウミ』山田園子【17夜目】

昨日紹介した作品と、あした紹介する作品から比較すれば、やや初期っぽさを感じさせる山田園子のフィルムのひとつ。優れた才覚を持つ作家は、「感情」を届けようとする、という所に一つの共通点があると思う。圧倒的なグラフィックでも、声高で暑苦しいメッセージでもなく、とてもシンプルな「感情」、そこに力点を置く重要性を最初から判っているというか……。

繊細でやさしい、そして丁寧なグラフィック、真心のあるアニメート、非常に作家性を感じさせる環境音へのこだわり。けれど結局最後に残るのは、こういう心の冒険をした、相手とまた会話もしていないのに自分の中だけで語り合って、そしてどこかで通じ合ったような、そんな気持ちにさせてくれた、その「感情」の旅路……なのではと思うのだ。一番、みんながアニメーションを作っていた時代なので、これも埋もれてしまったのかもしれないけれど、やっぱり優れた作家性のある作品は強度が違うなぁ、と思います。