ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

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『ほかほかおでんのうた』細金卓矢&山下清悟【40夜目】

モーショングラフィックスはまったく専門分野ではないので、より詳しい方が丁寧に説明してくださることはきっとあると思うけれど……。ここ数年で、抽象絵画のようなアプローチがメインストリームだったモーショングラフィックスに、急激に具象的なアニメーシ…

『カナメヲ』らっパル【39夜目】

いわゆる「WEB系アニメーター」であり、特にエフェクトアニメで世に知られるようになった早熟の天才・らっパルが、2015年に突如発表した短編作品。その内容は、彼のこれまでのフィルモグラフィと連続性がありながらも、想像を絶するほどの圧倒的な飛躍を遂げ…

『プレゼントまでの道のり』らっパル【38夜目】

根っからのインターネット・ネイティヴであり、「WEB系アニメーター」に影響を受け、小学生か中学生か……という超早熟な段階から(自分も小学生からだけど)作品数を重ねたらっパル。ストーリー性はどちらかというと希薄なほうで、とにかく動かしまくり、派手…

『SPACE SHOWER TV 「アニソン日本」』らっパル【37夜目】

いわゆる「WEB系」アニメーターと呼ばれる人々がいる。テレビアニメなどの商業アニメーションを手がける原画マンは、通常、まずスタジオに採用され、現場に動画マンとして放り込まれる。そこで何年も下積みをし、キャリアアップしていく……。そんな数十年の伝…

『FRENZ 2015 二日目深夜の部オープニング -TAKE OFF-』機能美p【36夜目】

機能美pは現在、年に一度行われる上映会、FRENZを中心に新作を発表している。新宿ロフト・プラスワンを二日間に渡り借り切って行われるこのイベントは、間違いなく「日本一熱狂的な映像上映イベント」だ。観客のテンションの高さ、一方での礼儀の良さ、上映…

『Clade over 〔クレード オーバー〕』機能美p【35夜目】

「キネティック・タイポグラフィ」と銘打たれた、文字を画面に大胆にあしらう作風で観客を熱狂させる機能美p。昨日紹介した傑作『月は無慈悲な寄席の女王』の翌年、機能美pは早速、新たな挑戦を企てる。 『Clade over 〔クレード オーバー〕』で描かれたの…

『月は無慈悲な寄席の女王』機能美p【34夜目】

さぁ、とんでもない一本を紹介しよう。 この作品を最初に教えてくれたのは、ひらの君だ。「これ見たことある?絶対好きだと思う」と、LINEか何かで送ってくれた記憶がある。後で調べたら、その年初めて僕がFRENZ2012という上映イベントに出展したとき*1、別…

『動物園(いきたいところ)』(作者不詳)【33夜目】

あ!あった。14夜で取り上げた作者不詳の『banging the drum』の作家さん、YouTubeチャンネルをみつけたぞ。おそらく作り手が同一人物と思われる作品が、もう一本だけ出てきた。タイトルは動画情報によれば『動物園』とあるが、作中では『いきたいところ』と…

『サラリーマンNEO Season3 オープニング』青木純【32夜目】

青木純は、卒業制作となった『スペースネコシアター』以降、商業制作、公開制作やワークショップなどで新たな作品を重ねてゆくことになる。その中から、僕が特に好きな作品を一つ挙げる。 インターネットではもう見れないのだが……NHKのテレビ番組『サラリー…

『将棋アワー』青木純【31夜目】

あなたがもし「アニメーション」を作りたくなったならば、まずどんな内容のものを思い浮かべる? キャラクターが動きまくるバトルアクション? 瑞々しい高校生たちの引き裂かれるような青春劇? 重厚なストーリーが展開する近未来SF? それとも寝静まった夜…

『コタツネコ』青木純【30夜目】

出ました! 青木純の代表作。どてらを着た猫が六畳の和室でコタツに座っている。という謎の絵力もさることながら、可愛らしいタイトルとのギャップが激しい冒頭のインパクトたるや、すさまじい。青木純のどの作品もそうなのだが、音の演出がこの作品でも実に…

『奈良鹿物語』青木純【29夜目】

青木純の作品を観ていて思うのが、制作期間的な制約から、ちゃんと中身を縛って、それをストーリーにも確信的に反映させていることだ。『走れ!』『テレビ』『Apartment!』は、実は制作期間もとても短いし、ワンカットもの、最小限カットものの作品になって…

『Apartment!』青木純【28夜目】

「アパートもの」は、わりかし学生が思いつく中では「あるほう」の作品だと思う。自分が卒業した代も含めて、他にも数作品見たことがある。こういう作品が往々にして弱くなってしまうのは、「主人公が不在」になりがちだからだ。結局、主人公を決めきれない…

『テレビ』青木純【27夜目】

このブログでも必ず時間を割いて紹介することになると思う、歴史的傑作――『ホーム』から数ヶ月後、青木はひとりで再び人形アニメーション制作に乗り出す。アイデアは極めてシンプルだった。ワンカットでみせる、「テレビの中に閉じ込められてしまった男」……。…

『走れ!』青木純【26夜目】

「これからまだ記事を975本も書くのに、もう青木純か!? 早すぎるんじゃないか!?」的なツッコミ、ようく判ります。でもだめだ! とにかく手をつけないと始まらない……。とっておいてもしょうがない……。 青木純が「自主制作アニメーション」の王道であり、…

『夏と空と僕らの未来』井端義秀【25夜目】

一つの強いアイデアが、語り草になる作品がある。井端義秀の『夏と空と僕らの未来』なんて、正にそれだ。 作品が始まると、マンガのコマ割りがあらわれる。その中に登場人物が駆け込んでくる。今で言う「モーションコミック」風の演出……最初だけは。作品の設…

『アメリカンホームコメディ』熱湯【24夜目】

前作『山田君ロックンロール』で、会場に集まった観客に手拍子を促す「参加型」アニメーションを提唱した熱湯。彼はこの作品で、さらにとんでもないことを企む。作品が始まると、(『フルハウス』みたいな)いかにものアメリカン・ファミリーがテーブルに座…

『山田君ロックンロール』熱湯【23夜目】

熱湯がもうひとつ革新的だったのは、このころ勃興していた「オンライン上映会」に(この作品で)新しいアイデアを吹き込んだことだ。インターネット上にアップされたものを各自のPCで見ながら、2ちゃんねるの専用スレッドに感想を書き込み、たまに誰かがブロ…

『スイート・スイート・スイートホーム』熱湯【22夜目】

FLASHというジャンルで活躍していた、熱湯の代表作といえる一本。まるで小演劇のような一幕モノで、居間のちゃぶ台を中心に、とある一家が座っている。まずは父が話し始める。「毎度お馴染み家族大喜利……司会のお父さんです」。誰一人クスリともせずに、淡々…

『コークスクリューバレンタイン』熱湯【21夜目】

インタラクティブな仕掛けで映像を2パターン見せるやり方は、ビデオ作品では少々誘導が難しいんだけれど、この作品は最初にふたつのボタンがあって、クリックしたほうが再生される仕組みになっていた……ので、とても入りやすかった。全く同じ内容のアニメーシ…

『ATM1224』熱湯【20夜目】

まったく別件で、他の方にこの作品を紹介する機会があって、改めて……ずば抜けて面白いコンセプトの作品だなと思ったのだ。アニメーションが始まると、ATMを模した画面があらわれる。しかしどのボタンを押しても、ATM内の受付係の彼女はお金を引き出させては…

『スピーチ』熱湯【19夜目】

FLASH作品をここで取り上げるのは少々躊躇する。今や動画もスマホで見るのがほとんど。だけどFLASHだとスマホじゃ再生できないし、ここにも埋め込めないし……。ということで、興味が出ましたらググって頂けたらと思います。熱湯(さん)の作品はファンも多い…

『family』山田園子【18夜目】

たぶん、山田園子の代表作と言えばこちらになるのだろう。非常に丁寧なコマ撮りアニメで、おばあちゃんがリンゴを切る様子を4分間、淡々と描いた作品。音の設計も素晴らしいし、何より、これもまた「感情」や「手触り」に重きを置かれていることが素晴らしい…

『ウツのウミ』山田園子【17夜目】

昨日紹介した作品と、あした紹介する作品から比較すれば、やや初期っぽさを感じさせる山田園子のフィルムのひとつ。優れた才覚を持つ作家は、「感情」を届けようとする、という所に一つの共通点があると思う。圧倒的なグラフィックでも、声高で暑苦しいメッ…

『bridge』山田園子【16夜目】

前の記事に続き(また?)、音楽とそのメッセージが素晴らしいショートアニメーションが、これ。もうめちゃくちゃ、もう、めちゃくちゃ大好きなんですよ……。出会ったのはもう6年以上前、『こわくない。』を何かの専門学校のコンテストに出して、その公開講評…

『JACK NICOLSON』イシバシミツユキ×長田悠幸【15夜目】

前の記事に続き、ところでブッチャーズといえばもうこれ! これですよね!! という作品。こちらはbloodthirsty butchersの公式MVで、漫画家の長田と映像作家のイシバシがタッグを組んで(どういう分担だったかは判らないけど)作られた名作。何とイシバシの…

『banging the drum』(作者不詳)【14夜目】

前の記事に続き、こちらも完全に作者不詳の作品。bloodthirsty butchersの楽曲『banging the drum』にアニメをつけた作品なんだけれど、これも無性に大好きで……。とてもミニマムなアニメーションなんだけれど、やたらドラムが正確かつ丁寧に描写されているこ…

『さよならをしること』(作者不詳)【13夜目】

長らくこうして色々作品を見ていると、「コンテストに応募されておらず、グループ展の情報もなく、作者のホームページもなく、SNSなんて普及するはるか前」であるが故に、作品だけがポーンとネットに上げられているが作者名すらよくわからないような作品と出…

『魚に似た唄』竹内泰人【12夜目】

竹を割ったようようなポップさが特徴である竹内(さん)のフィルモグラフィーの中では、もしかするとちょっと珍しめかもしれない、やや内向的な印象のある作品。空き家の六畳部屋に全長2メートル以上もある巨大な人形を作ってコマ撮りした映像はインパクトが…

『オオカミとブタ』竹内泰人【11夜目】

日本人の手による「自主制作アニメーション」の、YouTube再生記録ってどの作品だか知ってます? 実は長らく、この作品が日本人トップだと僕は思っていた。現時点でも、何と390万再生。『フミコの告白』が400万再生を突破しこの作品を抜いたのは、実はごく最…