ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『ゴノレゴ』ポエ山【133夜目】


さて、『ゴノレゴ』である。

この作品と出会ったとき、僕はまだ中学一年生だった。2ちゃんねるへの恐怖心をようやく克服しつつあり、BakaFlaに出入りし始めていた、本当に短編アニメーションを観はじめた最初の最初のころの作品。いささか自分が幼な過ぎたこともあり、そもそもこの作品が『ゴルゴ13』のパロディであることすら認識しないまま鑑賞していた。ものすごく2ちゃんねる的なノリを引きずりつつ、同時に隆盛を極めていた「テキストサイト」のネタを引用して、ダーティーなキャラクターにあえて下世話な話をさせるという、本当に一発ネタな作品だ。けれどとにかく、流行ってしまった。2ちゃんねる的アニメーションの象徴であり、FLASHアニメーションが日本という国に知れ渡るきっかけとなり、もはや「吉野家コピペ」といえばこの絵を結びつけない人は居なくなり、文化庁のなんだかよくわからないカタログにも選ばれたりした*1歴史的作品として持ち上げられた。単刀直入にいえば、時代が求めた、少々過大評価された一本だったのだと思う。

それでも、この作品には数々のセンスがある。コピペ・キャラクター・TTSの組み合わせの妙は語るまでもないとして、まずはテロップである。緩急のついた見事な配置、全てを読み上げない取捨選択、そしてメリハリのある文字配置。シュールになるフレーズだけを見事に抜粋し、「で」や「今」でリズムを作って視聴者の目を離させない。次第に怒りのボルテージを上げていく「つゆだく」の配置の面白さや……と思ったら「小一時間問い詰めたい。」や「素人にはおすすめできない」では均等配置したりして、やたら真面目なことを言わせているかのように「視覚的」にも見せることで、また笑わせる。そもそもオリジナルの文章は太字も何もないただの平文なので、ここに感情を演出し、見事な緩急とストーリーを織り上げたポエ山の手腕は実に巧みだった。ポエ山作品で一貫している、色づくりのセンスも既に現れている。今見ても、本当によくできている作品だと思う。

f:id:friendstudio:20180509215228p:plain

とはいえ、とはいえである。やっぱり文章もイラストも他からのパロディなわけで、そして何より、クリエイター・ポエ山の本質は、ここにはまだない。ゴノレゴシリーズって10話くらいあるけれど、「FILE 5」あたりから見せてくる映画的な演出のカッコ良さ(とバカバカしさ)は今見ても色褪せず素晴らしい。そして後述するけれど、ポエ山の一種のサービス精神はまたひとつ大きな魅力なのだ。初打席で満塁ホームランを放ち、FLASHアニメーションから旅立ったポエ山のフィルモグラフィを、少しだけれど、今日から見てゆこうと思う。

*1:これ、他のリストの選ばれ方も意味不明だし好きじゃない……。