ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『木ノ花ノ咲クヤ森』村田朋泰【129夜目】


『路』シリーズから10年あまり、村田の待望の新シリーズは、「震災三部作」とも呼ぶべきコンセプチュアルな作品として発表された。その始まりを告げるのが、この『木ノ花ノ咲クヤ森』だ。

歪んだ太陽が照らす灰色の森の中。異形の姿をした主人公がその荒野を進んでゆく。闇を喰らい、あちこちに放置された「かつてあった」気配を探し、寄り添おうとする主人公。一方、防護服に身を包んだ存在たちが、彼の命を狙って執拗に追い回す……。

モチーフになっているのは紛れもなく、放射能が今も残る警戒区域と、そこに放置され今まさに朽ちようとしている人間や生き物の生活の気配たちだろう。「かつてここにあった」気配の中をさまよい、何かを探し続けようとするその姿は、主人公やアプローチを変えつつも、『路』シリーズから変わらない村田の強烈かつ根底にあるテーマとして、本シリーズにも受け継がれている。


この作品は、Galileo Galileiのミュージックビデオとしても発表され、こちらでは『白の路』と同じく抜粋版として編集されている。「HERO」よりも「サークルゲーム」のほうが、いくぶん親切な作られ方になっているかもしれない。