『吉野の姫』丸山薫【106夜目】
丸山薫はイラストレーター・漫画家として活動する一方、2005年ごろはFLASHを用いたアニメーション制作にも本腰を入れていた。本作はFLASHアニメーション作家がユナイトしたイベント・JAWACON2005で初号公開されたほか、多数の映画祭でも上映歴を重ねた。
これまでの作品よりも圧倒的に劇映画が意識されていて、スコープサイズの画角設定や、ややシリアスな内容のストーリーも取り入れられている。かわいいし上手いしでゆったりと見ることが出来るし、改めて再見したのだが、ストーリー中の、一種の裏切り方が実にうまい。そこのテクニックの上手さが、本作のクオリティをさらに一段上にまで押し上げていると思う。映画的な演出でもある一方、このあたりのストーリーテリングは漫画家としての才能・経験が生かされているのかもしれない。これ以上漫画家からアニメーション作家を輩出させるのは(われわれが駆逐されるので)危険だと思いますね……。もし丸山のこんな手触りの短編が気に入ったら、丸山の漫画家としての著作『ストレニュアス・ライフ』や『事件記者トトコ!』もおすすめです。
音質だけ改善されると良いなぁ……。