ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『Notre chambre われわれの部屋』折笠良【102夜目】

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折笠のその制作スタイルは、逆に言えば、コンペに全ての主眼を置いたものでもないし、映画館での興行を目指されたものでもない。エンターテインメントとして仕上がってはいるけれど、最初からそこを狙っているわけでもない(と僕は認識している)。つまり、彼が制作を終えた段階で、(チャンスが無ければ)世に放たれることなく作品が眠ってしまう可能性もあるということだ。

本作は『水準原点』とほぼ同時期に制作されていながら、発表の機会は『水準原点』よりも圧倒的に少なかった。自分については、本当についこの間の、新千歳空港国際アニメーション映画祭でようやく鑑賞できた作品。その後すぐにあった作家のトーク・セッションによれば、『水準原点』と本作はまるで一対のような内容にも思えるという。前者は作家の困難・苦しみを描き、そして本作には、一種の幸福感が宿っている。

フランスの哲学者、ロラン・バルトの著作をライトボックスに透かして紙の上からなぞり、アニメートさせながら少しづつ原書を読んでいった体験をそのまま1本のフィルムに繋いだもので、多少大変なこともあったのかもだけれど、全体的には楽しそうな雰囲気が伝わってくる。その分、他の作品よりはカメラがやや内向きにも感じられる。これまでよりもさらに、よりアニメーション作家ーテクストの著作者、という関係性を鑑賞者が俯瞰しているようなイメージ。まるでダンスするみたいに、戯れるようにそれと向かい合う姿は、アニメーション作品に秘められた更なる可能性と、そして……なにかひとつ、大きな勇気をもらえているような気さえするのだ。

アニメーションは、圧倒的に自由で、そして“物語”にこれほどにも強い表現媒体である。色々な作品が、生まれてほしいし、生みださなければいけないな、と思う。折笠の作品は、永久に私たちの勇気であり続ける。