『雲の人 雨の人』上甲トモヨシ【76夜目】
上甲作品の大きな魅力は、その卓越したグラフィックだ。このキャラクターが「何で」出来ていて、触ってみるとどうなるのか、持ち上げるとどうなるのか……その「触」感の違いが、惜しげも無くアニメートで表現される。ちょっとズルして大雑把になってしまいそうな部分も、何一つ例外なく緻密に描き込まれ、画面の情報量として積み上げられてゆく。そしてそれが、作品のストーリーにおける根幹の表現――両者の断絶とコミュニケーション――に「セリフよりもはるかに」雄弁かつ見事に機能しているのだ。
デジタル時代ならではの、隅々まで重ねられたレイヤーが生み出す奥行きのある背景美術も素晴らしい(これは、後の上甲の得意技となってゆく)。そして思わず「おお……!」と息が漏れそうになるラストの展開も巧みだ。雲のひと?雨のひと?という若干オリジナリティの強い設定が、ここで全て結ばれ、明かされる。思わずもう一度見たくなるようなクライマックスだろう。これもまた、一種の「皮肉」のセンスなのだと思う。
口だけで描かれる表情もとてもユニークだ。……と書こうと思ったら、ホームページの説明によればこれは「眼」らしい。知らなかった……。