『Notation of Rotating Earth』大橋史【66夜目】
「音楽」の要素を一音一音徹底的に追及する作風を、まるで「研究」するかのように極めてゆく、大橋史の大学の卒業制作にあたる作品。
音楽的要素を記号的なグラフィックで魅せつつ、風景を実写に切り替え、過去作品よりもより静かな内容に仕上がっている。ルックへの意識がこれまで以上に高くなっていて、「残る」ものを作ろう、という気負いが感じられる。また一種のインスタレーション的な要素もあって、卒業制作展で*1実際にスクリーンを立て、展示されることを強く意識した内容になっていると言えるだろう。そういう意味では、大橋の作品の中ではやや異色作かもしれない。教授である原田大三郎(先生)の影響も感じさせられる。
見事なのが、その視覚的要素に、どこか幻想的な、そして神秘的な、やさしく心を震わせる感覚が加わってきているということ。この傾向は、次のクライアント・ワークに引き継がれた。明日紹介する作品で、大橋は大きな飛躍を遂げることになる。