ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『Madrix』細金卓矢【43夜目】

お題を与えられ、そこから8時間で新作映像をひとつ作る……『Cut and Paste Tokyo 2009』というトーナメント・イベントに、細金が出展した作品。超短距離走で制作されているからか、細金の持ち味であるポップセンスが存分に生かされたものになっている。細金は本作で、大会に優勝した。

彼の(当時の)得意技だった記号的なヴィジュアル、ビビッドなカラーリング、テンポの早い展開は出色だ。……とは言っても、やはり何よりもユニークなのが、一体どうやって思いついたのかはサッパリ判らないが、家の「間取り図」をモチーフとして取り入れていることだ。我々が安い紙に印刷されたもので見たことがあるような……平凡な家々の間取り図が生き物のように動き、変形し、増殖してゆく。まるで見たことがない映像になっていた。抽象的なのに、とても具象的……。細金の強みである「発想力」が、特に感じられる作品だろう。

この1本が契機となり、細金はテレビアニメ『四畳半神話大系』のエンディング映像を依頼されることとなる。本作『Madrix』を発展させたような作品になっているので、こちらも併せて観賞してみて欲しい。