ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『Apartment!』青木純【28夜目】

「アパートもの」は、わりかし学生が思いつく中では「あるほう」の作品だと思う。自分が卒業した代も含めて、他にも数作品見たことがある。こういう作品が往々にして弱くなってしまうのは、「主人公が不在」になりがちだからだ。結局、主人公を決めきれないから、アパートを定点観測するようなオムニバス的な作品に手を出してしまう。青木純は、まずは主人公が引っ越してくるところから始めたこと、そして最後に小さなカタルシスを持ってきたことで、それを解決している(ちなみに、『コーポにちにち草のくらし』も「アパートもの」ですね)。

うまいのが、どれも匂わせ方を「やり過ぎていない」ことだ。女の子への伏線も最小限だし、昼と夜で違う表情を見せる住人にも、毎夜ケンカが絶えない住人にも、主人公はほどよい距離感を作っている。その様がこの物語に、何か一つ希望のようなものを紡ぎ出しているのだ。互いに不干渉な「冷たい」社会……なんてことを言わずに、なんだかんだで互いを少しづつ許し合いながら、毎日が続いてゆくことを描いている作品だと思う。背景二枚、歩く作画も少しづつ、という比較的低コストな中で、しっかり丁寧にする部分は作り込まれているところもいい。

あのおじさん、いつ寝てるんだろう……。