ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『ケムリクサ』irodori【7夜目】

人類が荒廃したかも? しれない世界、そこに「人間」が紛れ込む! ……あ、『けものフレンズ』のあらすじじゃありませんよ。これです、これ。

irodori第三作目。またしても作風は驚くべき大変革を遂げた。女の子に突き刺さる刃! しかし女の子はそれを何ともせずに高笑いし、反撃する——。ニコニコに当初投稿された、『ケムリクサ』の冒頭部分だ。ドタバタエンタテインメント、叙情的なほっこりジャパニメーション、そして続く第三作目は、まさかのシリアスなSFバトルアクションだった。

この作品、男の子が出てくるまでがちょっと長いんだけれど……彼の出現で物語は動き出し、ひとりで全てを背負っていた、凛の心は溶かされる。彼は彼女にとっての、「役立たず」の希望となる。物語は解決しない。とにかく先に進むしかない。世界に立ち向かうには、あまりにも絶望的なストーリーの、そのラストカットは、それでも彼女たちの掌の上に、新しい地図が書き加えられるというものだ。何が待ち受けているのかもわからない。「けれど、それでも」——。この、ささやかで、けれど「進めば次がある」ことを信じている、そんな燃え上がるような希望。「でも、やるんだよ!」というクライマックスは、何だかこの当時のirodoriとも重なる。

まるで『眼鏡』と『たれまゆ』の中間地点を目指されたような、2Dと3Dの交差点のようなグラフィック表現も出色。この作品の完結から1年後、irodoriチームが映像部分を手がけるテレビアニメ『てさぐれ!部活もの』シリーズの放送がスタートする。