ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『nakedyouth』宍戸幸次郎【4夜目】

ぼくが、日本学生アニメーション史上最高傑作だと思っている作品。忘れもしない……東京都写真美術館の地下一階、学生CGコンテストの受賞作品展で、狭いシアターの中、隣の人と膝をくっつけあって、この作品と出会った日のことが今も忘れられない。ファーストカットの緑から圧倒的なアニメーション表現、続いて立ち上がる、あまりにも美しいシャワールームの光、音、そして立ちのぼる湯気。息をのむ映像の数々が少しづつ鑑賞者に与えるその「予感」は、尺が進むにつれて次第に高まってゆく。呼応するふたりの息遣い。流れて行く日常。そしてリフレインする映像の数々。観るものが抱く小さな「予感」は、想像以上の衝撃をもってラストカットで炸裂し、頭の中で砕け散る。

音響効果も音楽も素晴らしい。何より見ている場所が違う。作ろうとしているもののスケールが段違いだった。たくさんの学生アニメーションがこのあと作られたけれど、やっぱりこれ以上のものはまだ観ていない気がする。ある意味ではひらのりょうの『ホリデイ』が近いんだけれど……。これを作りたい、という衝動は、一体どこにあったんだろう。

宍戸は現在、アニメーション会社・ユーフォテーブルの3D技師としてバリバリ『Fate』シリーズを引っ張っているみたいです。確かにこの作品で、何かがやり尽くされてしまっているのかもしれない。そういう意味でも、空前絶後・唯一無二の傑作中の傑作だと思う。これをみていない学生さん、だめだよ……!