ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『かがみのげんおん』宍戸幸次郎【3夜目】

『nakedyouth』の橋渡しになるような実験作で、何度か観ているけれどストーリー自体はそれほどよく解らない。重要なのはこの作品が2004年に作られているということだ。映像革新となった『彼女と彼女の猫』からまだ3年、学生作品が歴史を塗り替えるきっかけとなった『ホーム』からは1年しか経っていない。宍戸は発表当時、東北芸術工科大学の三年生だった。実写的なレンズと光の試行錯誤は、まるで絵画や、「実験映像」と名付けられていた素晴らしいビデオ作品のそれのようで、しかも手書きでなくコンピューターグラフィックで表現し尽くされていること、そして何よりも圧倒的な作家性がこの頃から垣間見えることも、ずば抜けた存在だったと言えると思う。いまこの作品が、すこし「古いな」と思えることは、結果的にどれだけその後のアニメーション表現にこれが影響を与えたのかということだ。2000年代の学生アニメーション・ゴールデンエイジを代表するような作品のひとつ。