ショートアニメーション千夜千本

短編アニメーション作品を紹介してゆきます。まだ見ぬ作品に触れる機会にして頂ければ幸いです。

『春原つめあわせ』春原ロビンソン【140夜目】

「アニメーション」の範疇をどこまでにするか、は難しい問題だ。詳しい人からごく浅いテレビアニメファンまで色んな方がいらっしゃる……。『ポプテピピック』の人形アニメパートを「アニメじゃねー!w」と笑う人もいれば、実写映画とまったく同じ撮影を用い…

『「フカシギの数え方」 おねえさんといっしょ! みんなで数えてみよう!』土居誠史【139夜目】

異色作を紹介したい。 2012年に日本科学未来館の常設展示「メディアラボ」内で行われた、企画展示「フカシギの数え方」のために制作されたショートアニメーション。「不可思議」とは、億とか京とかと同じ数字の単位の名前で、膨大な数字と人類はどう向き合う…

『ファイター「3月のライオン meets BUMP OF CHICKEN」』ポエ山【138夜目】

『ゴノレゴ』『quino』を発表したアニメーション作家・ポエ山は、その後、ノウハウを生かして様々な商業作家としてのキャリアを積んでいる。他方、別名義も含めてインディペンデントでも数々の作品を残し、ニコニコ動画全盛期には、彼らしいキュートなグラフ…

『FRENZ 2013 一日目夜の部 オープニング -ENDLESS JOURNEY-』ポエ山【137夜目】

熱狂のオフライン上映イベント、「FRENZ」の2013年オープニング映像。毎年このオープニング映像の制作者は事前に公表されておらず、当日のクレジットでサプライズ発表されるのがお決まりになっている。だから本当は、会場にいた皆が、この映像は誰が作ったの…

『FLASH★BOMB オープニング映像 そんなことより、注意事項~楽園』ポエ山・スキマ産業【136夜目】

2ちゃんねるの人気爆発と共に「オフ会」のムーブメントが盛り上がる中で、FLASHカルチャーの爆心地として存在感を増していたFLASH・動画板では、有志が新作を持ち寄りオフラインで上映会を開催する流れが生まれていった。2003年に行われた上映イベント「FLAS…

『quino and the MudRock』ポエ山【135夜目】

きのう紹介したアニメーション『quino』の外伝的作品。舞台は『quino』からXX年後、再び砂漠でひとりぼっちになったquinoが、この大地に住まう「とある存在」と出会うストーリーだ。雑誌上で連載されたものをまとめた、連作短編アニメーションになっている。…

『quino』ポエ山【134夜目】

いま調べものをしていたら初めて知って驚いたけれど、『quino』のエピソード1が発表されたのは『ゴノレゴ』よりも前のことだったという。すぐ後だったのかなというイメージだったが……。知らない方がいらっしゃるかもしれないから、念のため書いておく。あの…

『ゴノレゴ』ポエ山【133夜目】

さて、『ゴノレゴ』である。 この作品と出会ったとき、僕はまだ中学一年生だった。2ちゃんねるへの恐怖心をようやく克服しつつあり、BakaFlaに出入りし始めていた、本当に短編アニメーションを観はじめた最初の最初のころの作品。いささか自分が幼な過ぎたこ…

『糸』村田朋泰【132夜目】

人形アニメーションを中心に、人々の記憶の戸をたたくようなセンチメンタルなアニメーションを紡ぎ続ける村田朋泰。おしまいに、あまり知られていない村田の名作を紹介したい。代表作「HERO」を発表したMr.Children・桜井和寿が参加する別ユニットBank Band…

『松が枝を結び』村田朋泰【131夜目】

『木ノ花ノ咲クヤ森』より始まった、村田の「震災五部作」*1最新作。このシリーズでは最も村田の人気作品に近い作風で、可愛らしいキャラクターがアイコンタクトを交わし、どこかなつかしい景色が巧みな表現によって描かれて、そしてそれらが……大津波により…

『天地』村田朋泰【130夜目】

『木ノ花ノ咲クヤ森』に続く「震災三部作」(この言い方は僕の独自のものです)二作目は、村田のフィルモグラフィ史上でも異質な(たぶん)実験映像的作品として『天地』に結実した。炎が湧き上がり、大地が映され、水が流れて、土を削りその形を変えてゆく…

『木ノ花ノ咲クヤ森』村田朋泰【129夜目】

『路』シリーズから10年あまり、村田の待望の新シリーズは、「震災三部作」とも呼ぶべきコンセプチュアルな作品として発表された。その始まりを告げるのが、この『木ノ花ノ咲クヤ森』だ。 歪んだ太陽が照らす灰色の森の中。異形の姿をした主人公がその荒野を…

『森のレシオ』村田朋泰【128夜目】

人形アニメーション作家・村田朋泰の、また別のアプローチの作品群についても触れておこう。叙情的で、どこかなつかしい作品を数多く手がける村田だが、本作はそれがちょっと異なっている。真っ白のフェルトや糸で作られた世界に住む少女・レシオと、毛むく…

『家族デッキ』村田朋泰【127夜目】

や~~~も~~~良かった~~~!!!アニメーション作家・村田朋泰が『路』シリーズ以後に手掛けた、下町の小さな理容店を舞台にしたミニ・シリーズ。それが『家族デッキ』だ。 ファーストカットから抜群だった。木造の小さな家、やさしく響く環境音。お母…

『白の路』村田朋泰【126夜目】

Mr.Childrenのキャリアを代表するミュージック・ビデオとして、そして55万枚を売り上げた大ヒット・シングル『HERO』のジャケット・アートとして、あまりにも有名な『白の路』は村田の代表作と言えるだろう。だが『HERO』のミュージック・ビデオが、あくまで…

『朱の路』村田朋泰【125夜目】

数年前の藝大院の上映に行ったとき、村田朋泰がトークゲストで呼ばれていて、久々にこの『朱の路』を鑑賞した。観終えた後、ああ、やっぱりすごい、と思って、魂ごとスクリーンへ持ってゆかれた記憶がある。やっぱり、本当に、圧倒的だった。ただし一方で、…

『睡蓮の人』村田朋泰【124夜目】

本ブログで主に取り扱っているのは、新海誠『彼女と彼女の猫』が登場し、NHK衛星第一で「デジタル・スタジアム」が放送開始された2000年前後より現在に至るまでの日本の「短編アニメーション」についてだ。簡単に整理しておくと、1997年に文化庁メディア芸術…

『最終ロケット・イェイ&イェイ』内沼菜摘【123夜目】

おととし(2016年度)の日本大学芸術学部映画学科卒業制作*1として発表されたのち、一部の「ファン」によって再度発掘された怪作アニメーション。 実は地球の外で生まれた少女・メルバと、地球から彼女を連れ出した謎の青年・M2が、天文学的な距離をゆく宇宙…

『ルール』かみやろん【122夜目】

「GIFアニメ」の世界で代表的な作家のひとりだった、かみやろんの代表作。今はもう珍しくないけれど、美少女的なキャラクター・デザイン、ぱりっとした塗り分け、そして女の子の身体のやわらかさまで伝わる上質なアニメートは、当時の他の自主制作アニメーシ…

『otokogi』かみやろん【121夜目】

このブログはマジで「何でもあり」なので、GIFアニメについても僕が知りうる範囲で取り上げてゆく。美術大学だったり、学生CGだったりみたいなオリジナルアニメーションのカルチャーとはほとんど違う文脈で、テレビアニメや一般大のアニメーション研究会に脈…

『Square Apartment』永谷優治【120夜目】

『シリーズおともだち』の永谷優治による最新作。『シリーズおともだち』で発揮した、カワイイキャラクターに不穏なことをさせまくる不条理ギャグを今回もぞんぶんに味わえる作品となっている。 以前青木純の『Apartment!』のときにも書いたが、ショートアニ…

『シリーズおともだち』サワイ企画【119夜目】

クリエイティブ・チーム「サワイ企画」の永谷優治が、キャラクター・デザインにしいたけ鍋つかみを迎え制作した短編ギャグシリーズ。YouTubeで全6話が公開されており、自主制作のDVDには未公開話が収められているという。 ユニークなのが、「ほのぼの(不穏…

『Jupiter19078』鈴木純郎【118夜目】

一体どうやってこの作品を知ったんだっけ……。経緯は忘れてしまったけれど、その内容は決して忘れられない短編アニメーション。木に(ネットによると、松らしい)カンナをかけて、その表面を1枚づつ地道にコマ撮りしたものだという。 まず、こんなにも木目が…

『さよならスペースシャトル』浜根玲奈・岡本将徳【117夜目】

岡本は現在に至るまで、数々のクライアント・ワークでも見事な手腕を発揮している。その中から、ひとつご紹介。 立体と2Dの使い分けが素晴らしい。現実に接続されたマテリアルの選択と、ある種の妖精的な存在であるペラ紙のキャラクター。それらが動き回って…

『まつすぐな道でさみしい』岡本将徳【116夜目】

超絶技巧コマ撮りアニメーション作家・岡本の東京藝術大学大学院修了作品。声優に竹中直人が起用され、「藝大のコネクションって一体……!?」と当時の鑑賞者をビビらせた(笑)一本だったりもします。 とにかく、挑発的な内容だ。思えば『ばあちゃん』の頃か…

『BONNIE』岡本将徳【115夜目】

岡本将徳は「光の作家」でもある。アニメーションに、自然光の美しさを意識的に取り入れることが多い。『BONNIE』は、自身の研究テーマである「コマ撮り」を撮影スタジオの外にまで持ち出した意欲作だ。 岡本をはじめ、いくつかのアニメーション作家が持って…

『パンク直し』岡本将徳【114夜目】

切り絵アニメーションの超絶技巧職人、岡本将徳の代表作。このトンガりまくった内容に、当時リアルタイムで鑑賞した「界隈ファン」の衝撃は計り知れなかっただろう。とにかく、すごい。まずは無言で鑑賞してみて欲しい。 音楽一切ナシ。(語弊がある言い方だ…

『ばあちゃん』岡本将徳【113夜目】

岡本将徳は、めちゃめちゃ職人肌タイプのアニメーション作家だ。オリジナル作品においての、(この言葉がふさわしい作家は他にも多く居るけれど)まるでラーメン屋のガンコ親父のような柱の立ったオリジナリティ、哲学、そして誰もが息を呑む超絶テクニック…

『そんな夜』WHOPPERS【112夜目】

今年の新千歳空港国際アニメーション映画祭で、この作品を大きなスクリーンで観られたことは大きな収穫だった。なんかすごく、映画っぽいんですよね。実際、ある種の映画へのリスペクトがとても込められている作品だと思う。全体的にユーモアが海外の、ちょ…

『mindscape』北村みなみ【111夜目】

今回、北村みなみの記事を書くにあたって、北村のVimeoアカウントを掘り下げていたら……一番下のほうにこの作品がアップされていた。おそらく、だいぶ前のものになるのだろう。再生して10秒で「あっ、学生のころの作品だな」と思って、まあいいかとブラウザバ…